山本憲資の百聞と一見の二兎を追う

フレンチ「コート・ドール」斉須政雄シェフ

「自分は遅いんですよね、飲み込みも、それを体現するまでも。とにかく遅いんです。でも、それが故に、マイウェイでいられた部分があります」

老舗フレンチ「コート・ドール」の斉須政雄シェフの言葉だ。お店は今年でオープンから35年、未だにホームページもなく、予約も電話でのみ受け付けている。

僕は70歳を迎えるシェフがお元気なうちに、その料理を1年を通じて味わいたいと思い、2020年は毎月お店に伺いその料理と向き合ってみた。そして、1年が経ったタイミングで、シェフにインタビューをさせていただいた。(前編:「コート・ドール」斉須政雄シェフ 35年の進化とその土台となった友情

冒頭の“マイウェイ”という言葉を聞いて、斉須さんの人となりがこのお店を作り上げてきたのだなと感じた。シェフの人となりが、レストランのアイデンティティと強いシンクロニシティを産み続けている。そのマイウェイを貫きながら、どういったリーダーシップを発揮されてきたのか、どのようにお店をマネジメントしてきたのか。話を聞いた。

自分から率先して動く


バックボーンも価値観も違う人たちの集まりなので、最初はやっぱり軋轢がありました。その中で僕が「こうありたい」ということを伝え続けて、それに与しない人たちはやはり離れていきましたね。理想の形は未だにわからないですが、今の仲間たちはみんなよかれと思ってきてくれていて、チームとしてうまくやっています。

リーダーシップって、自分が動かないとダメです。下の人達は常に査定しています。言動と行動がマッチしていないと、信用されません。それをやるためには、体力を維持して、健康でいる必要もあります。

僕は、みんなが「シェフがここまでやるんですか」ということまで率先してやります。オープンしたての頃から、ずっとそのスタンスです。これも、パリで修行し、その職場の雰囲気に憧れを抱いた「ヴィヴァロワ」で体に叩き込まれたことで、自分の原点です。

あそこで働いていて、これまで“作業”として言われてやっていたことを、「もしかして楽しいのかも」と初めて思えたんです。本気でやってみると意外と達成感があり、気持ちがよかった。煩雑でみんなが避けて通るところに意外と金鉱が眠っているんだな、ということを実感しました。みんなにもそういうところを大事にしてほしいので、「なんでできないの?」というような接し方はしません。

文・写真=山本憲資

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