まず「事実だけを受け止める」ということ。メンタルが沈みがちな人の傾向として、相手から言われたことを全て聞いてしまう特徴があります。「相手が何を求めているかを考える」ことも重要です。「怒り=リクエスト」だと捉えてみてください。
すると、実は、具体的なリクエストがない怒りも多いことに気づくはず。例えば、職場でありがちな「なんでできないんだよ」「ちゃんとやってくれよ!」といった怒り。また、家庭で親が子どもに言いがちな「心配しているのがわからないのか(=親の気持ちをわかってほしい)」というのは、そもそもリクエストが無茶なものです。相手に怒ったとしても、状況は改善しません。
特に子どもは、環境の変化によってストレスを抱えがちな時期だからこそ、親から余計なストレスをかけないようにしましょう。「いつもよりできないこと」があって当然でイライラしても仕方がありません。年齢にもよりますが、今日の出来事や悩みなど、積極的に子どもの言葉に耳を傾けるようにしてください。言葉で表現することで理性が働き、子ども自身のイライラや怒りもコントロールできるようになっていきます。
大人でも、怒りを抱えたままひとりで深く悩んでしまう人がいます。そんな人にアドバイスしたいのは「相談する=解決策を決めなくてはいけない」ことではないということです。最初から解決策を見出そうとはせず、まずは近しい人に話してみる。言葉にすることで頭の中が整理されます。
このとき、ひとつ気をつけたいのが「あまり愚痴を言わない」ということ。言葉に出して愚痴を繰り返すと、記憶に定着してしまいます。周囲の人に悩みを言いたくない人は、自治体などの相談窓口を利用してみてください。
怒りはポジティブに変換できる!
最後にお伝えしたいのは、アンガーマネジメントとは「怒りを抑える」ものではないということです。昨年、私は「あなたの怒りは武器になる」という著書を出版しましたが、怒りはただネガティブなものではない、怒りは何かを変えるブレイクスルーになる可能性を秘めていることを書いています。
例えば、アメリカでの黒人差別に抗議するBLM運動や、世界に連帯して広がった性被害を告発するMe Too運動など、社会に対しての怒りを表現することで、社会をもポジティブに変えられるケースがあります。
すべての怒りは「私憤」から始まりますが、それが社会のための「公憤」になることで変革につながる可能性があります。社会を変えるまでいかなくても、職場で感じるイライラがあったとして、それを適切に伝えることで、社員にとって状況が改善されることもあります。
もっとも大切なことは「自分の怒りに、蓋をしないこと」。ビジネス面においても、怒りを感じた事柄に正面から向き合うことで、リーダーシップを発揮して、周囲を巻き込みながら変革を起こしたり、自分自身の成長につなげたりすることができるでしょう。
安藤俊介◎1971年群馬県生まれ。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。アンガーマネジメントの理論、技術をアメリカから導入し、教育現場から企業まで幅広く研修、セミナー、コーチングなどを行う。著書に『イライラに振り回されない7日レッスン』(毎日新聞出版)など多数。