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遺伝子変異はあらゆる生き物にとって必要な仕組みであり、生物多様性の源である。変異があるからこそ、これほど多種多様な種が存在するのだ。ウイルスも例外ではない。ほとんどのウイルスは、環境に適応するためにゲノム(全遺伝情報)を変化させるエキスパートだ。では、新型コロナウイルス感染症を引き起こすウイルス(SARS-CoV-2)についてはどうか。現時点でわかっているのは、それがただ変異するだけでなく、その変異が人類にとって深刻な意味を持つということだ。

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従来より生き延びやすくなったウイルスが猛威を振るう?


これまでにわかっていることを要約してみよう。

新型コロナウイルスは、ウイルスのRNA(リボ核酸)のランダムで小さな変化によって徐々に変異する。こうした変異はウイルス自体には影響がないことがほとんどだ。場合によっては独自の修復機構が働き、自然淘汰のスピードを抑えることもある。しかし、現状のウイルスの感染者は全世界で1億に迫る。このように個体群の規模が大きい場合、進化に有利な特性を持つ変異種が出現しやすくなり、従来より生き延びやすくなったウイルスが猛威を振るうことになる。

さて、ここでひとつ疑問が出てくる。英国由来の「B117」や南アフリカ由来の「501.V2」といった変異種が最初に見つかったときに、誰もが同じことを思ったはずだ──これから数百万、数千万単位の人々にワクチンを接種しようとする場合、上の可能性は何を意味するのだろう?

ファイザー製ワクチンの効果は?


最新の研究の結果は、その問いへのひとつの答えになるかもしれない。少なくとも、現時点で米ファイザー/独ビオンテック共同開発のワクチンを接種している選ばれた幸運な人々にとっては朗報だろう。

すでに予防接種済みの20人から採取した血液サンプルを解析した結果、ファイザーのワクチンによってつくられた抗体は、N501Y変異を含むウイルスに充分な効果を発揮していた。N501Yはスパイクタンパク質への変異で、「B117」変異種の重要な特徴でもある。この結果自体は心強いが、あくまでひとつの事例にすぎない。GISAID(インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスの情報共有プラットフォーム)などのゲノム情報のデータベースを見ても、遺伝子の世界はまだまだわからないことばかりなのだ。

遺伝子変異によって新型コロナウイルスが生き延びやすくなることはほとんどないものの、一部の変異は明らかに感染力が増している。N501Y変異のように、宿主細胞の受容体との親和性を高め、ウイルスが結合して侵入しやすくするものもあれば、ウイルス量そのものを増加させ、体内に侵入する感染性粒子の数を爆発的に増やしかねないものもある。さらに、最も危険な変異ウイルスの場合、ワクチンによって強化された免疫防御システムすらも回避、あるいは突破するおそれがある。

ヒトの抗体を「すり抜ける」変異ウイルス


現在のワクチンを完全に無効化するような変異種が出てくる可能性はきわめて低い。とはいえ、ヒトの免疫を逃れやすくなった変異がワクチンの効果を弱めることは充分に考えられる。

このカテゴリーに当てはまるおそれがあるのが、E484K変異だ。これはN501Y同様、スパイクタンパク質の変異で、南アフリカ、ブラジル、日本、その他の数ヵ国で確認されている。E484K変異は、新型コロナウイルスに偽装的な効果を与えるようで、ワクチンによって作り出された抗体がウイルスを見つけて排除するのが難しくなる。つまり、ウイルスが抗体をすり抜けやすくなるのだ。

翻訳・編集=大谷瑠璃子/S.K.Y.パブリッシング/石井節子

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