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福岡ソノリクの大型ウイング式冷凍冷蔵庫

フードロスの問題は、われわれの想像以上に深刻だ。世界では、途上国を中心に約7億人の人々が十分な食事ができず、栄養不足に苦しんでいる(Unicef, The State of Food Security and Nutrition in the World 2020)。一方で、先進国ではまだ食べられる食品が日々大量に廃棄されている。

同時に、フードロスは環境問題にも影響を及ぼしている。食品廃棄で発生するメタンガスは、二酸化炭素の約25倍の温室効果があるとされ、気候変動の一因となっている。食品の過剰生産は石油や水、肥料など、限りある資源を無駄に消費し、地球温暖化を早めることになる。

フードロスに通ずる問題として、農業が抱える問題も深刻だ。農作物の多くは収穫期が決まっており、天候にも大きく左右される。豊作時には供給過多となり相場は下落、多くが廃棄処分となる一方で、不作時には需要過多で価格が高騰する。

加えて、新鮮で色や形の整った野菜や果物を好んで選ぶ消費者の嗜好を汲み、「見た目」が良くない農作物は、日々大量に廃棄されている。

農家の人々にとっては、「収入が安定しない」うえ、心血注いで育て上げた農作物の多くを廃棄しなければならないという、苦しい状況が常態化しているのだ。

こうした農作物の問題を解決すべく、消費者側の意識改革に取り組み、「より多様で豊かな農作物の世界」を実現、フードロスに待ったをかけようと奮闘する物流企業がある。


「保管だけじゃ足りない、加工もだ」


農産物の運送業や倉庫業を手掛ける「福岡ソノリク」は、これまで農作物の生産から保管、輸送までを一気通貫で担ってきた。同社が「物流」という枠組みを超えてこうした取り組みにも力を入れてきたのは、「『採れたてで綺麗な見た目の農作物だけに価値がある』という既存の価値観にこだわらず、農作物そのものが持っている個性を引き出すことであらゆる形で消費者に届け、新たな需給が生まれ農業全体を盛り上げることに繋がるのではないか」という想いからである。

そして今年から新たに、消費者側の意識改革に取り組むべく「ソノリク農作物劇場」をスタートした。

同プロジェクトは、複数のパートナー企業と連携し、保存方法や加工方法、またデザインやPRなど商品の見せ方を工夫することで、収穫期を過ぎたり、規格外となったり、さまざまな理由で出荷が困難となった農作物に、新たな価値を見出そうというものだ。

その第一弾として、コロナ禍で出荷困難となったタイの契約農家で生産されたオクラを加工し、パウダー状にした商品「御来楽」(おくらく)を開発、1月8日から販売を開始した。

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「ソノリク農作物劇場」の第一弾、オクラをパウダー状にした商品「御来楽」(おくらく)。

どんな取り組みでも、未知の領域に挑戦するには、その裏でさまざまな苦労や葛藤があったはずだ。

取材・文=長谷川寧々 編集=石井節子 写真提供=福岡ソノリク

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