NBA Top Shotで話題の「NFT」は、日本のスポーツビジネスも変えるのか?


日本での普及における課題


このように、NFTには従来のスポーツビジネスにおけるコンテンツ販売やデジタル資産管理に見られなかった新しい可能性がある。一方で、こうした新たなテクノロジーを日本のスポーツビジネスの現場が導入する際、どのような課題が想定されるだろうか?

まず、前提として理解しておいた方が良いポイントは、NFTは資産管理の新たな仕組みであって、それ自体が価値を生み出すものではないという点だろう。

例えば、FCバルセロナが昨年6月にファントークンを販売し、2時間足らずで130万ドルを売り上げたことがニュースになった。しかし、これはバルサだからあっという間に売り切れただけで、ブランド力のないスポーツチームが安易なマネタイズの手段として飛びついても成功しないだろう。

NFTという仕組みを通じて顧客との間にどのような価値交換や課題解決を実現するのか、その設計こそが肝になる。そのブランドに接する機会を持つだけでファンが満足してくれるようなバルサやNBAのようなメジャーブランドと、名前も知られていないようなマイナー競技では、価値交換の方法は異なってくる。

技術の新規性や話題性とマネタイズの成否には何の関係もないと考えるべきだろう(話題のテクノロジーを使えば上手く行くという単純な話ではない)。

今年2月、米国でFCF(Fan Controlled Football)という新フットボールリーグがスタートして話題になった。4チームによる室内フットボールリーグなのだが、その特徴は文字通りファンがプレーをコントロールできる点にある。

選手のドラフトや試合への起用、コールするプレーまでファンが決定できるというのは、プロスポーツリーグとして前代未聞だ。もちろん、これはテレビゲームではない。

例えば、プレーの選択なら、「パス」か「ラン」を選択し、その後提示される4つのプレーの中からファンから投票数が最も多かったものが選択される。それぞれのファンの選択の成果(勝利への貢献度)はFanIQとしてスコア化され、スコアアップするほど投票権も大きくなっていくという仕組みだ。

実はこのFCFだが、当初の構想ではファンがトークンを購入してチームのオーナーになるという触れ込みだった。この企画は途中で頓挫してしまったようだが、チームの所有権を株式のようにNFT化して販売するというのはなかなか面白いアイデアだ。FCFの取り組みを見ても分かるように、新興マイナーリーグでも発想次第では今までにない全く新しい価値交換の仕組みを提供できる。

話題のテクノロジーを使ってファンの忠誠心を安易にマネタイズに利用するのは避けた方が賢明かもしれない。

話題性を隠れ蓑にした対価のないマネタイズは悪魔の取引であり、その1回限りでファンに愛想を尽かされてしまう恐れがある。

NFTに限らず、取ってつけたような特典を見返りに安易にマネタイズしようとするクラウドファンディングなども散見されるが、個人的にはせっかく獲得したファンからの信頼を切り売りしているように見えてしまう。

NFTという仕組みを使ってどんな価値を提供できるのか、それを本質的に考え、用意する必要がある。
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文=鈴木友也 編集=宇藤智子

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