そこからさらに、自分の「仕事観と人生観」について整理するためのワークへと進んでいく。生きるうえで譲れない自分の価値観を発見し、その信念にそぐわない人生をデザインしないためにも大事なステップだ。
「仕事観」とは、なぜ仕事をするのか、仕事をする意味、お金と仕事との関係などについて、「人生観」とは、生きることの意味や目的、自分と他者との関係、善と悪などについてどう捉えるか、自分に問う作業だ。さらに、その仕事観と人生観が人生においてどう関係しているか、食い違っている点や補い合っている部分はどこかなどについて、あらかじめ30分ほどかけてシートに考えをまとめておく。
そしてワークショップでは、事前に書いておいたそのシートを、3人のチームでそれぞれが読み上げるのだが、その発表を聞いて驚いたのは、それぞれの世界の捉え方や大切にしたいことがこんなにも違うのかということだった。
「世界の成り立ちを分解していったら結局は分子に行き着くと思うから、他人と自分の間にそんなに違いや壁があるとは思っていない。だから人に尽くすこと、人に喜んでもらうことが自分の喜びでもある」「仕事の視点が明確になることは、人生における思考整理の助けになる」など、普段一緒に仕事をしている同僚の振る舞いや行動を裏付け、納得できる信念やポリシーを知ることができて面白い。
普段なかなか知る機会のない同僚の「仕事観と人生観」。お互いの信念やポリシーの違いに驚く
一段深い自己理解ができると共に、相手の現在地についても知ることができて印象的だった。「仕事観と人生観について、こうした機会に一度言語化しておくと、後の人生において資産になると思う」という意見もあがった。
デザイン思考5つのマインドセット
現在地を把握したら、実際に人生の問題を解決するプロセスへと進んでいく。次のワークを紹介する前に、ここで鍵となる「デザイン思考」の5つのマインドについて整理しておこう。
この講座では、デザイン思考を使って人生を自分の思いどおりにデザインするためには、以下の5つのマインドセットが必要だという。
1. 好奇心:興味を持つ
2. 行動主義:やってみる
3. 視点の転換:問題を別の視点でとらえなおす
4. 認識:人生はプロセスだと理解する
5. 過激なコラボレーション:助けを借りる
デザイナーはつくりたいものを「考える」だけでなく、手を動かして「築いて」いく。理想を妄想するだけではなく、実際にプロトタイプ(試作)をつくってそのプロセスを楽しむのが特徴だ。その姿勢を人生に当てはめてみれば、これら5つのマインドセットが理想を現実化するツールとなる。
特に注目したいのは、3の視点の転換と、4の「人生はプロセスだ」と認識することの重要性だ。
人生の行き詰まりは、誰にでも起きること。なぜ行き詰まってしまうのかというと、人生に対して間違った「機能しない信念」を持っているからだそうだ。それは、人生には1つのBESTな道=唯一の正しい答えがあると思い込んでいること。その考え方自体に原因がある。
人生は「解決すべき問題」などではない。エンゲージメントをもって取り組む「冒険」である──このワークショップの開発者の考え方を前提にして、BESTな人生が1つしかないという思い込みは手放そう。これから何通りもの素晴らしい自分があると考えることが、デザイン思考で人生をとらえる際のポイントとなる。