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d3sign/Getty Images

ファンドマネージャーとして巨額の資金を運用してきた異色の経歴を持つ作家、波多野聖。彼が書き下ろす歴史経済サスペンス小説『バタフライ・ドクトリン』から、「いま」という時代を読み解くシリーズの4回目をお届けする。

今回は、ある物事や現象を捉えるときに私たちが注意すべき姿勢について、超常現象『百匹目の猿現象』を手がかりに考える。


世界には、一見説明のしようがない"謎"に包まれた現象が存在する。それらはしばしば人々の関心を集め、ときには信仰の対象になることもある。

小説「バタフライ・ドクトリン」にもそんな謎多き存在が登場する。巧みな言葉で信者を扇動し、裏で政府を操る宗教法人「那由多(なゆた)」だ。5章8話「百匹の猿」(Forbes JAPAN本誌 3月号掲載)では、那由多の真の狙いを探ろうとする首相と官房長官に対し、教祖・培崘郷人(ばいろんごうと)は次のように話す。

「『那由多』は今や現象なのです。総理は『百匹の猿』という話をご存知ですか?

離れ小島に猿が沢山生息しています。その中の一匹の猿が偶然、浜辺で芋の泥を落として食べてみた。すると格段に旨い。その後、その猿が教えたわけではないのに同じように芋を洗って食べるようになるという……現象のことです

このように『那由多』は今あるあらゆる存在を変える現象なのです。同時多発で起こるべくして起こる。あらゆる創造的破壊が一連の現象として起きてしまう。それが『那由多』ということなのです」

培崘が引き合いに出す「百匹の猿」とは、生物学者ライアル・ワトソンが創作したといわれる架空の現象、『百匹目の猿現象』のことだ。

宮崎県の幸島で1匹の猿が偶然、浜辺で芋の泥を落として食べるという、これまでとは違う行動に出た。海水で洗うと芋に塩味がついて、旨かったのだ。すると、その猿の行動を周りの猿が次々と真似をし始め、いつしか百匹以上の群れ全体にその行動が広がった。それからしばらくすると、さらに不思議な現象が起きた。それらの猿とコミュニケーションを取る手段が全くない違う島にいる猿たちまでもが、同じ行動を取り始めたのだ──。

この『百匹目の猿現象』という話は、ある集団において、行動や考えなどをする個体がある一定数を超えると、接触のない同類の仲間にも伝播するという現象を物語っている。

このような現象は、一見説明がつかない不可解な「超常現象」として捉えられがちだ。しかし、周囲の条件を理屈で考えていけば十分に起こり得る話であり、行動のひとつひとつの因果関係をクリアにしていけば、実は何ら不思議でも、ましてや超常現象でもないことがわかるだろう。

試しに、『百匹目の猿現象』が現実に起きるとしたら、一体どのようにして起こりうるのか、紐解いて考えてみよう。

文=大竹初奈 編集=松崎美和子

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