2015年にヘルシンキの10店舗の加盟レストランでサービスをスタートしてから、6年間で提供エリアを23カ国129都市に拡大。今年1月には5億3000万ドル(約550億円)の資金調達を実施した。
2009年からテック業界に身を置き、多くのスタートアップや投資家を間近に見てきた彼は、なぜフードデリバリーサービスという分野を選んだのか。そして、創業当初から日本での展開を見込んでいた理由とは。
学生時代からスタートアップのアクセラレータープログラムの運営、コミュニティ作りを継続してきたミキ・クーシが、「今後、ローカルビジネスを含めた全てのビジネスがオンラインへ移行する」と確信したのは、2014年のことだった。
この同じ年にスタートさせたのが、フードデリバリーサービス「Wolt」だ。
現在のパンデミックが追い風になっていることは間違いないが、Woltに限らず、今後さらにデリバリーサービスの市場は拡大するはずだとクーシは言う。
「Woltの利用が定着しているヘルシンキの人たちからは、なぜレストランのデリバリーだけなのか、近所の生鮮食品や花もデリバリーして欲しいという声を聞くようになりました。店で食事を提供することができなくなった個人経営の飲食店からの問い合わせも増えています。今後、Woltもデリバリーするアイテムの選択肢を増やしていく予定ですが、こうした声が届くのも、ローカルビジネスとの連携に注力してきた結果だと思っています」
日本でも選択肢が増えてきたとはいえ、フードデリバリーサービスを利用できるのは、どのエリアでも大手が展開する飲食店のテイクアウトメニューが中心だ。
Woltが他のフードデリバリーサービスと異なる特徴のひとつに、地元で人気のあるレストランとの提携を強化していることがある。
また、サービスを提供する各国にオフィスを構え、ユーザー、加盟店、配達パートナーに対して、チャットボットではなく、実際にWoltのスタッフが1分以内に返答を行うチャットサポートを提供している点も、今後Woltが日本でさらに受け入れられる強みになるという。
日本とフィンランドの共通点
「創業時から日本での展開を決めていた理由はいくつかあります」とクーシは言う。
「まず、日本は世界3位のフードデリバリー市場であるにも関わらず、フードデリバリーのオンライン比率は世界的に見てもとても低い。テクノロジーが発達しているのに、昔から行きつけのお店に電話でオーダーする人が多くいる、不思議な国です。そして、市場規模1位のアメリカ、2位の中国とは異なり、日本はWoltが生まれたフィンランドと文化的な共通点が多くあります」