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放送作家・脚本家、「くまモン」の生みの親。

小山薫堂 東京blank物語 Vol.3

放送作家・脚本家の小山薫堂が経営する会員制ビストロ「blank」では、今夜も新しい料理が生まれ、あの人の物語が紡がれる……。連載第3回。


blankという店名の由来のひとつは「料理人はブランク(空欄)」──つまり、誰でもキッチンに立って調理ができるというスタイルにある。そこでオープン当初、錚々たる料理家の方々にお声がけし、ひとり一品ずつを担当するという夢のようなスペシャルディナーコースをつくっていただいた。

このときに出された「フロマージュ クレーム」は、チーズと卵と生クリームのみでつくられたシンプルさながら、デザートとしてもワインのつまみとしてもいける秀逸な一品で、現在はblankの“再現料理人”山田ゴローがコースの一皿目として提供し、たいへん喜ばれている。

つくってくれたのは料理家・食ジャーナリストの狐野扶実子さん。パリの名門「ル・コルドン・ブルー」を首席で卒業した方であり、『dancyu』編集長の植野広生さんに十数年前に紹介された。……と思っていたのだが、狐野さんによれば初対面は30年以上前。

当時、僕は『料理の鉄人』の構成作家をしており、1997年の「鉄人ワールドカップ」という企画の際にパリの「アルページュ」のシェフ、アラン・パッサール氏を招いた。そのときアルページュのスーシェフとして番組でアランのアシスタントを務めたのが、狐野さんだったのだ。

狐野さんは2000年10月にアルページュを退店。いったんは帰国したが、パリの友人からホームパーティでの料理を頼まれ、その際のゲストから「次は私の家でぜひ!」と頼まれたことをきっかけに、欧米と日本を行き来する出張料理人となった。「私にとって料理とは、お客様に喜んでもらえることがいちばん。それであれば、レストランという場にこだわらずともできる」と考えるに至ったのだという。

狐野さんの料理をいただいてファンになった僕は、日本航空が最上の機内食を模索して2013年1月に「スカイオーベルジュ BEDD(ベッド)」をスタートさせた際、メニューを考えるドリームチームのひとりに狐野さんを推薦した。

ちなみに「BEDD」だが、お腹が満たされた後は座席をベッドにして休めるファーストクラス/ビジネスクラスならではの、「Dine(食事をする)」「Delicious(おいしい)」「Dream(夢見ごこち)」をラストの「D」に込めている。

感慨深いのは、機内食にかかわるようになった狐野さんがフードロスを含む食のゆゆしき問題に興味をもちはじめ、慶應大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科に入学したこと。先日「エシカル(倫理的)消費」をテーマにした修士論文を書き上げたそうだ。

新しい学びは、狐野さんの食の世界をさらに豊かなものに押し広げるに違いない。人は学ぼうと思ったとき、いつでも学び始めることができる──覚悟と情熱さえあれば。

写真=金 洋秀

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