ライフスタイル

2020.09.26 11:00

地元の人たちがこぞって通う 異国風味の「パリ料理」の店

「グラム」のテラス。パリでは当初9月末までだった臨時テラス席の設置が、来年6月までに延長された。

「グラム」のテラス。パリでは当初9月末までだった臨時テラス席の設置が、来年6月までに延長された。

食事を目的に、あるいは出張だけれど日々のごはんを何よりの楽しみに、パリにやって来る日本からの知人や友人から、よく聞くセリフがある。「ディナーに備え、お昼は軽くしておこうと思い、カフェでサラダだけにするつもり」というものだ。

旅行中に、生野菜を食べたくなるという気持ちはとてもよくわかるのだが、そんな時にオススメしたい店の選択肢の無さに、いつも、少し居心地が悪かった。サラダを、“野菜と具の盛り合わせ”ではなく、料理としてつくり、一品で成り立たせる店がこれまではとても少なかったのだ。

前回この連載で紹介したWilletteも、とてもサラダが美味しいけれど、メインを頼まず、前菜だけを食べるのはさすがに躊躇われる。しかし、最近は、メインにベジタリアンプレートを用意している店が、難なく見つかるようになった。

毎週この店に足を運ぶようになった


私は元来「ヘルシーだよ」と店を勧められて、「行ってみたい」という気持ちになることは稀だ。それどころか、すぐに斜に構えて、「シリアルと野菜の組み合わせでボソボソしたものが出てくるに違いない」などと想像する。

昨年、3区のアルシーヴ通りに出来た「Gramme(グラム)」を、近くに事務所を構える友人に勧められた時もそうだった。

ところが、立て続けに数人から「グラム、いいよ! おいしい」と言われた。友人たちの、大げさではない勧め方に、気持ちが傾いた。「ヴィーガンでね……」とかの「枕詞」が付かないことにも興味が湧いた。コンセプトありきの店ではなさそうだ。そして、朝からオープンで夕方4時には閉店、という営業時間にも心が動いた。

今年の初め、店のはす向かいにあるアンリ・カルティエ・ブレッソン財団の写真展を訪れる機会に、ランチをすることにした。

窓に貼られたメニューを見ると、きのこと目玉焼きの季節のタルティーヌに、味噌風味の小豆ペースト入りベーコンエッグサンド、レモングラス風味の鶏のブイヨンを注いだライスボウル、バイン・ミーなど、少しアジアのテイストが入っているものもある。

創作料理っぽいのだろうか。またしても、訝しく思う気持ちが顔を出したが、寒かったこの日も、店内はとても賑わっていて、思い切ってドアを開けた。
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文・写真=川村明子

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