地元の人たちがこぞって通う 異国風味の「パリ料理」の店

「グラム」のテラス。パリでは当初9月末までだった臨時テラス席の設置が、来年6月までに延長された。


それにしても、Grammeのメニューのラインナップは、アジアや中東、北アフリカなど国際色豊かなエッセンスがいつもどこかしらに見られる。

不思議に思って聞いてみたら、シェフのマリーヌは、ポーランド(父)とベトナム(母)のハーフだそうだ。目が青いので、アジアの血が入っているとは思わなかった。ポーランドは、ロシアに近い料理でペリメニ(ロシア風水餃子)やボルシチが食卓に上り、実家では日常的にバイン・ミーも食べるという。

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音楽業界でマーケティングをしていたMarineとコンサルトだったRomain

「でも、マリーヌの家で出てくるバイン・ミーと、Grammeで出しているバイン・ミーは全然違うよ」と、パートナーで店ではサービスを担当しているロマンが笑った。

オープン当初から、唯一、一度もメニューから外していないというバイン・ミー・ドッグは、蒸してからオーブンでカリッと仕上げる五香粉の香りを効かせた豚肉をほぐし、にんじんと紅キャベツの自家製ピクルスを一緒に挟んで、コリアンダーを加えてつくるマヨネーズを合わせた、食いしん坊の食欲を刺激する一品だ。

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パンの柔らかい甘みが、硬派な味付けの肉とピクルスの酸味を包み込んだ、リピート必須のバイン・ミー・ドッグ

世界各地の味に対してオープンで興味があるのは、その出自が影響しているところも大きいとは思うと前置きしながら、「パリのごはんを考えたら、世界の様々な風味が存在するのがパリだと思ったから」とマリーヌは付け加えた。それでGrammeの店名の下には、cuisine française(フランス料理)ではなく、cuisine parisienne(パリ料理)と書かれてある。

旬の野菜を用いてつくる、定番の一品、季節のタルティーヌには、よくラブネと、エジプトのミックススパイスのデュカが使われている。どちらも、食材店から買ってくるのではなく、自家製だ。

Grammeのタルティーヌは、いつの季節も華やかで美しい。この夏の終わりには、トマトとイチジクのローストを盛り、セージのチップスとバジルをあしらった、目にも舌にも夏の名残の太陽を感じさせる組み合わせを楽しんだ。

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夏の終わりのタルティーヌ

連載:新・パリのビストロ手帖
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文・写真=川村明子

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