ビジネス

2020.12.10 12:00

学生イノベーターの開発に密着 「音力発電」で世界に挑むまで|前編

Red Bull Basementの日本代表に選出されたチーム「hummingbird」。右から順に、木村拓仁、袴谷優介、須田隆太朗、青山奈津美


須田はこう説明する。
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「スマホとノイズキャンセリングを比べた時に、より多くの人が困ってるほうを考えました。ノイキャンを使用している人はまだ限られているから、共感を得にくいかなと。万人が必要としていて、共感されそうな開発にしたいと思いました」

北原は「世の中にニーズが多そうなほうを考えると、スマホだと思ったんだね。でも本当にそうかな?」と語り始めた。マクアケはこれまで、さまざまな実行者と共に、1万1000件もの前例のない商品や取り組みをローンチしてきた。その経験を元に学生たちにこう伝えた。

北原成憲
北原は、学生たちが本当にやりたいことを引き出そうと熱心に語りかけていた
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「前例がないことに対して周りはいろいろ言うんだよ。『それはニーズが薄いんじゃない? 売れないと思うよ』とか。でも実際に売れると手のひら返しするんだよ、世の中って。市場がないなら作ればいいし、実証しちゃえばいい。だから重要なのは、自分が何をやりたいか。揚げ足とられた時に、それでもやりたいものをやるべき。

電力供給の実験は、みんなにとってはステップでしかないよね。スマホ充電は、自分たちが描く未来を語る上でのパフォーマンスにすぎないんじゃないかな。だから純粋にどういう世界を描きたいのかを自分たちの言葉にする。そこが一番重要なのかもしれないね」

北原の言葉に、何度も頷く須田の姿が印象的だった。

各国の代表が集まる「RedBull Basement」のグローバルワークショップは12月11日〜13日に行われる。須田と袴谷が目指すのは「優勝」だ。

「優勝したその先は、大人たちから『お願いします』と声をかけてもらうことが目標です」と須田。袴谷も「もちろん優勝したいが、それはあくまでステップ」だと位置付ける。

未来を牽引するであろうイノベーターの卵たちの「1歩目」は、決して容易ではない。だが、彼らにはゼロから挑戦できる環境が用意されている。そこに伴走する社会人であるメンターからの問いかけをどう咀嚼し、本当にやりたいことを世界にアピールするか。後編では、彼らの世界の舞台での挑戦をお伝えする。

hummingbird
「hummingbird」がデモンストレーションのため開発した簡易な音力発電の装置。紙コップに向けて叫ぶと、音が電力に変換される仕組みだ。グローバルワークショップまでにこの技術もブラッシュアップする。

文=督あかり、河村優 写真=Christian Tartarello

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