冒頭から会場の笑いをとったのは、河野太郎規制改革担当大臣。菅義偉首相から「課題を浮き彫りにするには最高な大臣。摩擦を起こしながらやってくれます」と評されたことへの切り返しだった。
11月23日、将来の日本経済の中核となる経営者や企業幹部らが集う「G1経営者会議」に、菅首相と河野大臣が登場し、それぞれ経営者たちに話をする場があった。同会議は今年で9回目で、首相の参加は初めて。感染症対策のため初めてオンライン参加者も募り、310人が参加した。
行政の脱ハンコ化、マイナンバー構想の狙い
冒頭の河野大臣は、首相とのやりとりなど舞台裏を明かしながら、一丁目一番地である規制改革とDX推進について話し始めた。
「行政内部には押印が必要な手続きは1万4296種類あったが、そのうち印鑑登録が必要なものは83種類。法律に関係ないものは省令改正や解釈で対応し、来年の通常国会で一括法案として審議したい」
脱ハンコ化の流れが加速しているが、行政手続きにおいて電子署名を認めてペーパーレス、オンライン化ひいてはキャッシュレス化を推進していく考えを示した。
そもそも規制改革とデジタル化をなぜ推進するのか。この理由について、河野大臣は「一つは世の中を便利にするため。人口減少の中で人が寄り添い、人の温もりを大事にすることが、日本が目指す将来像だ。一方で、人がやらなくていいことはロボットやAIに任せて省力化するため、議論して行く必要がある」と語った。
防衛大臣から、管政権下で行政改革担当となった河野太郎大臣 2020年1月撮影 (Getty Images)
マイナンバーカードを巡っては、全国の普及率は2割余りにとどまっている。今後は、カードの4情報である、氏名、住所、生年月日、性別については本人が同意すれば、引越しをしても、転出、転入届、マイナンバーの住所変更をするだけで、その他の行政手続きなどでも適用できるような仕組みを目指す。
まず2021年3月に健康保険証がマイナンバーカードと紐づくようになり、医療機関や薬局などで順次利用できるようになる。2026年には、運転免許証とマイナンバーカードの一体化も目指し、いずれは住所変更のワンストップ化が実現する見込みだ。
こうしたマイナンバーの利便性を高めることで、河野大臣は、行政側から「プッシュ型の支援」ができることを強調した。例えば、コロナ禍にはさまざまな支援の給付金の振り込みの遅れが目立ったが、将来的にはマイナンバーカードと口座情報を紐づけることで、行政から早急に支援金を振り込み、通知するような仕組みも可能になるという。