ビジネス

2020.08.16 08:00

「子どもが野菜を好きになるレシピ」に西友が込めた想いとは


親子の視点から見える「野菜が好きになること」の重要性


今回のプロジェクトを語る上で重要なのが、アメリカのウォルマート(西友の親会社)とも共有する『Happy to Help』のキーワードだ。西友のユニフォームにも採用されているこの言葉には、小売業を通じて、顧客の課題解決を「喜んでお手伝いする」という意味が込められている。

小尾氏「西友には、『お客様が楽しいと思っていただけるか』を考えるカルチャーが根付いているんです。同時に、生鮮野菜売り場としては、生産者から届く新鮮な野菜を『お客様においしく食べてもらいたい』との願いを持っていました。

そこで注目したのが、今回の『子どもたちの野菜嫌い』という課題です。私たち自身の子育ての経験も踏まえ、売り場のコアターゲットである20〜40代の親御さんが抱くであろう、“ユニバーサルな悩み”を解決できないかと考えました」

小尾氏らは顧客インサイトを裏付けるため、3~10歳の子どもを持ち、野菜をスーパーで買う男女1000人にアンケートを実施。フルタイム勤務の女性を中心に、子どもの「野菜不足」「好き嫌い」などへの悩みが浮き彫りとなった。

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ここでさらに、西友が注目したのが、“子どもの視点”だ。

「子どもが野菜を食べてくれない」は、料理を作る親側の悩み。しかし、逆に子どもから見れば、「野菜がおいしいと思えない、けれども親に食べるよう言われてつらい」という悩みが見えてくる。双方の視点をきちんと持ち、親子の悩みがともに解消される体験設計を行わない限り、本当の意味で「顧客の課題を解決した」とは言えないのではないか──小尾氏らは考えた。

小尾氏「子どもたちは、何かのリターンを期待して野菜を食べてくれるわけではありません。子どもが野菜料理を食べないと、親御さんは『せっかく作ったのに……』と悲しい気持ちになりますが、子どもからすれば『親が勝手に作った』とも言えてしまうわけです。

なので、子どもたちに無理やり食べさせる方法や、ごまかして克服させるテクニックではなく、子どもたちが『野菜を好きになる』ことが大事だと思ったんです。嫌いなまま強制された体験は続きませんが、一度好きになれば、その後ずっと食べ続けられることもある。西友として、子どもが『野菜っておいしい』と感じられ、楽しく食べられるような体験づくりができないかと考えました」
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執筆/佐々木将史 編集/木村和博

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