ビジネス

2020.08.16 08:00

「子どもが野菜を好きになるレシピ」に西友が込めた想いとは

坂元 耕二

カルチャーを体現し、“西友に行けば楽しい”と思われる存在に


2019年11月5日、プロジェクトがスタートすると、小尾氏らの想定を超えて動画が一気に拡散。店舗にも多くの顧客が押し寄せ、「うちの子は野菜嫌いだったんですが、このレシピだと食べられたのでびっくりしました」など、生の声も多く届いたという。

null
赤羽店、東大宮店、大森店の3店舗には、支持率の高かった料理を味わえる試食コーナーも設置

なかでも、小尾氏らが特に手応えを感じたのは、「西友って、ちょっとおもしろいことをやってるんだと思った」などのフィードバックがあったこと。親子に「楽しい」の感情をもたらしたことは、同社の『Happy to Help』のカルチャーがプロジェクトで体現されたことの、一つの証左でもある。

小尾氏「今回のレシピを通じて、お客様から嬉しい反応をたくさんいただきました。しかし、私たちは『レシピそのものに価値はない』とも思ってるんです。おいしい調理方法の提案は他のスーパーでもやっていますし、レシピサイトにも良いものがたくさんある。

ただし、『西友が考えるいいレシピ』を提案することで、背景にある私たちの思いをきちんと伝えることは重要です。企業とお客様とのコミュニケーションの一つとして、すごくいい事例になったのではと考えています」

想像以上の反応が得られたのは、顧客からだけではない。店舗で働く社員(アソシエイト)からも、「売り場が活気づいてわくわくする」「期間が終わっても、コミュニケーションボードやレシピを撤去したくない」などの声が寄せられた。自社のカルチャーを表すプロジェクトに現場が共感した点も、今回の大きな成果と言えるだろう。

null

KIDS LOVE VEGETABLESは現在、店頭でのプロモーションは終わり、サイトのみが公開されている。今後の展開も「準備を進めている」とのことで、何らかの形でプロジェクトとして継続する予定だという。

コンセプトは変わらず、生活者の本質的な課題を解決し、西友のカルチャーを理解してもらうこと。そして、顧客の信頼を得ていくことだ。

*追記:「KIDS LOVE VEGETABLE」の次のプロジェクトとして、「WE LOVE VEGETABLES」が7月1日に発表された。

小尾氏「お客様の声を聞いていると、買い物を“苦痛”だと感じている方も結構いらっしゃるんですね。特に食品売り場には、『毎日作らなきゃいけない』という義務感を持って来られる方も多い。

だからこそ、『これが楽しい』と感じられる体験を、買い物や料理を通じてもっと提案していきたいと思っています。誰だって、楽しいことは大好きですから。『西友に行けば楽しい』と思ってもらえれば、自然とお客様に選んでいただける存在になるのかなと考えています」

執筆/佐々木将史 編集/木村和博

ForbesBrandVoice

人気記事