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2020.08.16 08:00

「子どもが野菜を好きになるレシピ」に西友が込めた想いとは

坂元 耕二

「素材を生かすレシピ」x「リアルを伝える動画」


「楽しい」という気持ちを生み出すことで、親子の生活を変えたい。西友はその手段として、家庭内に新たな体験を生み出すための、「子どもが野菜を好きになるレシピ」づくりを始めた。

開発に協力したのは、食育活動なども積極的に行っている料理家・フードスタイリストの黄川田としえ氏。子どもたちが野菜をおいしく食べられるよう両者が模索したのは、できるだけ“素材を生かす”レシピだ。

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料理家・フードスタイリスト 黄川田としえ氏(『KIDS LOVE VEGETABLES』公式動画より引用)

小尾氏「ブロッコリー料理であれば、ちゃんと『ブロッコリーがおいしい』と思ってもらえるレシピを目指しました。フレーバーには、子どもたちが好きなカレーやチーズを使っていますが、できるだけ野菜本来の形、歯ごたえ、匂いなどを生かすようにしています。

同時に、『本当に子どもたちが好きになるか』をきちんと検証し、客観的な“ファクト”として示そうと考えました。幼稚園児100人超を対象に実食を行い、その正直な評価を公開、80%以上の支持が得られたレシピを『子どもが認めた野菜料理』とすることに決めたんです」

この手法は、西友のプライベートブランド『みなさまのお墨付き』で用いられる、「消費者テスト80%以上で合格」の開発スキームを転用したものだ。ブランドとして開発した一つひとつのアイテムの味や量、価格などを、顧客から総合的に判断してもらう施策で、開発時点だけでなく、トレンドに合わせた細かな仕様変更の度に再テストも行っている。

“ファクト”をもとに顧客ニーズに寄り添い、プロダクトの品質向上と、西友への“信頼”を生み出してきたこの厳しい基準。それを今回のプロジェクトにも用いることで、徹底的に「顧客を中心に置く」西友のカルチャーを表したかったと小尾氏は語る。

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『KIDS LOVE VEGETABLES』公式動画より引用

小尾氏「試食の場に撮影を入れたのも、得られた評価をファクトとして証明したかったからです。今の時代、『世の中にないもの』をクリエイトしてきれいに見せる、かつての広告的な手法は人々に刺さりづらい。

でも、子どもたちが食べて、『おいしい』とか『食べられない』と返すことは、お客様にとってすごくリアルだし、おもしろいし、信頼できる。共感を得て、他の方にもシェアいただけるものになると考えたんです」

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『KIDS LOVE VEGETABLES』公式動画より引用

体験を「シェアしたくなる」意味では、子どもたちを巻き込んだ工夫もされた。例えば、店頭のカードは、ニンジン・ブロッコリーそれぞれの形に切り抜き、レシピごとに色を変えることで「6種類集めたくなる」ようデザインされている。

さらに、各レシピには「お手伝いポイント」として、子どもが料理に関わる工程も用意した。

小尾氏「人って、自分が作ったものだとそんなに否定しないんです。それに、一緒に作ることそのものが楽しいじゃないですか。

プロセスを親子で共有するなかで、子どもたちに自然と食べ物や料理に対する興味を持ってもらいたいと考えました」
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執筆/佐々木将史 編集/木村和博

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