ビジネス

2020.08.16

「子どもが野菜を好きになるレシピ」に西友が込めた想いとは

※この記事は2020年6月9日にXDで公開されたものを転載しています。

「顧客の課題を解決する」ことは、ビジネスにおいて最も意識すべき要素の一つ。けれども、そこで表面的に課題を解決するのか、それとも根本から課題を解決するのかによって、大きな違いを生み出すことがある。

「子どもが野菜を食べなくて、困っているんです」

そんな顧客の悩み聞いたとき、どのように向き合うべきだろうか。「野菜をいかに食べてもらうか」という課題を解決するだけなのであれば、「すり下ろしてわからないようにする」というのが考えられるかもしれない。

しかし、こうした課題に向き合う際、問いを変えることで発想が変わり、これまでにない解決策が生まれることもある。

「野菜をいかに好きになってもらうか」と問いを変え、多くの共感を集めたプロジェクトがある。昨年、大手スーパー西友が実施した『80%のこどもが認めた野菜料理 KIDS LOVE VEGETABLES』だ。

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『KIDS LOVE VEGETABLES』公式動画より引用

表層の課題を解決しようとするのではなく、顧客の根底にある課題を捉え、親と子、双方に新しい道筋を示した同プロジェクトの詳細を、商品本部マーケティング部シニアダイレクターの小尾秀男氏に伺った。

動画再生93万回。親の“共感”を呼んだ『KIDS LOVE VEGETABLES』


KIDS LOVE VEGETABLESは、2019年11月から開始したプロジェクトだ。

「野菜が苦手な子どもたち」に、心から「野菜がおいしい」と感じてもらうことを目指し、3カ月かけて独自の調理方法を開発。西友の全店舗でレシピカードとして配布すると同時に、ウェブでも作り方の動画を公開した。

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『KIDS LOVE VEGETABLES』公式サイトより引用

さらに西友は、開発した6種類の料理を113人の幼稚園児に試食してもらい、「おいしい」「ニガテ」の判定結果を公表。開発の背景から子どもたちの試食の様子までを、ドキュメンタリー動画として配信した。

野菜嫌いな子を持つ親のリアルな日常や料理を通した子どもたちの変化が多くの共感を呼び、動画の再生回数は93万回に及んだ。見た顧客からは「涙が出てきました」などの声が寄せられ、「想像以上の反響に驚いた」とマーケティング部の小尾氏は語る。



レシピカードも、補充の追いつかない店舗が出るなど、店頭の活況に貢献。2カ月でおよそ50万枚が配布されるのに合わせ、西友の青果全体の売上は2桁増となったという。

しかし小尾氏は、そうした数字面での成果はそもそも目標にしておらず、「お客様からの信頼の“結果”に過ぎない」とも語る。KIDS LOVE VEGETABLESは、どのようにして生まれたのだろうか。
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執筆/佐々木将史 編集/木村和博

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