経済・社会

2020.09.04 10:00

「シティOS」で市民に還元。バルセロナが本当にスマートな理由

「バルセロナ・デジタル・シティ」(バルセロナ市ウェブサイトより)(c)Clara Soler,


彼らは、バルセロナ市のオープンデータをもとに、7つの指標を使って地区ごとの「社会的結束指数」(ICS: Índexsin-tèticdecohesiósocial)を導き出し、データの可視化を行った。民族的多様性や社会的格差が生まれている状況などを含め、鋭く社会の状況を捉えたこの取り組みは、見事に初年度のコンペティションの大賞として選ばれた。
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フェラン・タラダ校の学生たちのプロジェクト「近隣地区における社会的結束力」(c) Institut Ferran Tallada

「普段はスポーツや音楽、ゲームを楽しんでいるごく一般的な生徒たちです。放課後に熱心に取り組んでいましたね。中等教育の4年目では、大学入試資格につながる教育プログラムを学びながら、将来のためにいくつかの専門科目を選択する必要があります。その中で技術革新やビッグデータなどを扱う科目は重要ですし、彼ら自身が大きな興味を持つ領域でした」(デビッド・サンチェス氏/ フェラン・タラダ校教師)

デビッド・サンチェス氏は、バルセロナ市が積極的に健康、安全性、環境など市民の日常生活に関わるデータを幅広く生成し公開していること、そしてその透明性の高い行政運営を高く評価している。若者たち自身が暮らす都市とその複雑性を理解するための重要なきっかけを提供するとともに、彼らがそれぞれの専門性を活かした仕事を持ち、自分自身の関心に相応しい職業を見出していくためにも有益だと考えている。
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フェラン・タラダ校の学生たち(写真=鷲尾和彦)

「まだ若い彼らにとって、『都市を考えること』はとても本質的なテーマです。多様性が進んだ社会は、不平等や格差を広げていくという現実があります。彼らはそのことを、今自分たちが取り組むべきテーマとして選び出しました。それは『自分たちの町は自分たちで変えられる』という感覚を育むことにつながります」(サンチェス氏)

市民とともに、社会的格差の是正、経済的な正義、男女の平等、生活環境の改善など、誰にとっても暮らしやすい「社会の質」が高い都市を目指す。「テクノロジー・ファースト」から「ピープル・ファースト」(市民中心)へ。

それが、バルセロナ市が描いた「スマートシティを超える」(Beyond The Smart City)の都市の姿である。

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バルセロナ市内(写真=鷲尾和彦)


※『CITY BY ALL ~ 生きる場所をともにつくる』(博報堂生活総合研究所「生活圏2050プロジェクト」刊)より

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鷲尾和彦◎博報堂生活総合研究所「生活圏2050」プロジェクトリーダー。戦略コンサルティング、クリエイティブ・ディレクション、新規事業開発など幅広い専門性を通して、地方自治体や産業界とのプロジェクトに数多く従事。主な著書に『共感ブランディング』(講談社)、『アルスエレクトロニカの挑戦』(学芸出版社)等。

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