EUでは2015年、「包装指令」が改正され、たとえばイタリアでは生分解性プラスチック製のものが流通しているという。靴店などでは、再生樹脂製の袋も使われているらしい。「生分解性プラスチック」とは、日本の国立環境研究所のHPによれば、「微生物の働きによって最終的に水と二酸化炭素にまで分解されることから、廃棄物処理問題の解決につながると期待されて」いる物質のことだ。
しかし、2014年からイタリア、ヴェネツィアに暮らす大村紘代氏によると、現在流通している生分解性レジ袋は若干もろく、従来のレジ袋に比べ、裂けたり穴が空いたりしやすいという欠点もあるという。
ヴェネツィアで見られる、環境絡みのそんな「思わぬ」事情、他には何があるのだろう。大村氏に寄稿していただいた。
「マイカート」という文化
日本のニュースを見るにつけ、環境施策はプラ袋減らしだけでよいのか? という思いがわいてくる。それはここヴェネツィアで見かける「ある2つの風景」が原因だ。
イタリアの大手スーパーで売られている専用のショッピングバッグ(一部、再生原料からできているらしい)。いわゆる「イタリアらしい」カラフルでデザイン性の高いものは意外と見かけない
実は私の住むヴェネツィア旧市街には、「日本では見られない人」たちがいる。それは、マイカートを転がして自宅のドアの奥に消えていく、「ショッピングカートを所有する人」だ。
ここ「水の都」ヴェネツィアには、自動車の走行が許されていない。それどころかバイクや自転車もダメだ。そもそも大小の運河が縦横にあり、橋も随所にかかっているため、物理的にも自動車が通ることが不可能なのだ。ここでの交通手段は一部のゴンドラや水上タクシー、水上バス、あるいは自分の「脚」だけだ。
そんな「車の走れない町」で重い荷物を運ぶには、ショッピングカートが非常に重宝する。私自身、とくに巣ごもり中、買い物の頻度を減らし、結果として一回の買い物量が増加していた時期には、どれだけショッピングカートがありがたかったことか。
水飲み場マップが「見える化」するもの
そして、私が「コンビニでレジ袋有料化」のニュースに際して思い起こしたヴェネツィアならではの風景が、もうひとつある。
町の至るところに水飲み場がある
ここでは、観光ガイドが町の広場などにある公共の給水スポット(水飲み場)を前に、案内中のグループの足を止め、手持ちのペットボトルやマイ水筒への給水を勧めているのを見かけることがあるのだ。彼らは、水をあえて買わなくても、飲み水はここで給水できますよ、と伝えている。
またあるホテルでは、町の至るところにある水飲み場ポイントも表示された観光マップを製作して宿泊客に配布し、希望者にはアルミニウム製の水筒も販売している。こうした観光客への働きかけによって、年間のプラごみの削減率は非常に高まるという。
水飲み場ポイントが記載された観光マップ