「バルセロナ・デジタル・シティ」計画では、それ以前の、先端技術を都市インフラに取り入れる「社会実装」の段階から、市民が新しいテクノロジーの可能性を活かし、都市をより良くするための新たなアイデアを自ら主体的に考え実現していく、そんな「真に民主的な都市」(デモクラティック・シティ)の実現へと進めることが目標とされた。
つまり、「テクノロジー」主導から、「市民」主導のスマートシティへのアップデートである。
確かに、これまでの「スマートシティ」政策では、都市インフラの整備と行政の効率化においての成果は生まれていたが、その一方で、スペイン国外の大手テクノロジー企業によるパブリックデータ独占の問題、またそこに膨大なコストがかかるという側面も指摘されていた。2015年に就任したコラウ現市長は、市民による自治とその進化を目指す方針を打ち出した。
市民から得たデータは市民に還元する
「バルセロナ・デジタル・シティ」計画では、バルセロナ市の「技術的な主権」を確立する方針が明らかにされた。
市民生活に関する様々な情報やデータは、市民に属するものであり、市民に還元すべきものである。こうした理念に基づき、バルセロナ市では都市のリアルタイムデータを一元管理する統合プラットフォームと、それらを市民に公開するウェブポータル「City OS」の整備が進められた。いわゆる「オープンデータ・ガバナンス」の取り組みである。
バルセロナ市は、こうしたデータを公開するためのプロトコルやルールづくりも進めている。
都市の変化や状況をデータを通して市民に明らかにし、行政の政策決定のプロセスを透明化することで、行政と市民との間に信頼感を醸成すること、そして、都市の運営に市民が主体的に参加できる環境を育てることがその大きな目的である。
バルセロナ市役所内 (撮影=鷲尾和彦)
また、行政内部においても、都市に関する様々なデータを部署の垣根を超えて共有しあうことで、担当者間の新たな協働や連携を生み、より質の高い公共サービスを実現しようとする狙いも含まれている。