自分で作ったお茶を提供する茶農家の一人(C)嬉野茶時
お茶の価値を変えたイベントはお茶の本場「静岡」にも展開
市民の評価をうけた「嬉野茶時」の評判は東京にも伝わり、東京のマンダリンホテルや六本木ヒルズ、渋谷パルコのオープニングイベントにも招致の声がかかるようになりました。
市内での展開も広がっています。いつでもお茶を飲んでもらえるように旅館の一角にカフェと茶葉のショップを併設。
そこでは、新しい客層向けに開発した茶葉をオシャレなパッケージにつめて販売。こだわりぬいた茶葉ということもあり、市場価格の5倍から6倍する価格でしたが、その売上げは年間700万円以上だそうです。
また、茶畑も観光コンテンツに仕立てました。「茶花プロジェクト」と名付けられた企画では、市内の風向明媚な場所に「お茶を飲める空間」をしつらえました。
雲海を見下ろす場所に「天茶台」、ヒノキやスギに囲まれた場所に「杜の茶室」、肥前吉田焼の製陶所の一角には「吉田茶室」を、見渡す限りの茶畑の中にそびえる「茶塔」など4箇所。
地元の自転車屋さんと地元タクシーを巻き込んだ「茶輪(ちゃりん)」プロジェクトでは、茶畑を移動できるサービスも開始しています。
森に囲まれた茶畑に佇む「杜の茶室」(C)嬉野茶時
こうした取り組みは、日本一の生産量を誇るお茶の総本山「静岡県」にも伝わり「茶事変」という姉妹企画をプロデュースするまでにいたっています。
嬉野という小さな街で興ったマイクロツーリズムが日本一の産地にまで展開したのです。
地域の産業は観光になる
日本は「ものづくり大国」と言われる、世界に誇れる素晴らしい技術力があります。
地域にある産業は、その場所に存在する確固たる理由があり、それはコト消費の時代において観光を含む地域産業に豊かなストーリーを与える重要なコンテンツです。
コロナ期においては、大きな投資をせず、地域の人たちと共同して、マイクロツーリズムで観光力を磨く。
観光に従事する方は、その審美眼を生かして足元にある「地域ならではの魅力」、例えば、地域の伝統工芸や農作物などの魅力にも目を向けてみてはいかがでしょうか。