なぜ北朝鮮の人権が題材に? 話題の3Dアニメ映画『TRUE NORTH』監督に聞く

清水ハン栄治監督


──お母様は在日コリアン3世とうかがいましたが、清水さんが人生をかけて作った本作についてどんな反応をされていますか。
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母はこの映画を作っていることを怖がっていました。北朝鮮を題材にすることのリスクを承知していたからです。他にも反対する人はいっぱいいました。公開が始まれば、誹謗中傷もあるでしょう。

6年前に公開された「ザ・インタビュー」というハリウッド映画がありました。金正恩を暗殺するという破茶滅茶なコメディ映画で、製作者たちが北朝鮮政府から脅迫されたり、配給元がサイバー攻撃を受けたりしました。デリケートなテーマを取り扱うことのリスクは理解しているつもりですが、「これは自分にとってのライフミッションだから」というこじつけと納得感で、無謀にもここまで進めてこられました。

もしも何かしら危害や妨害があったら、それはそれで映画のフリー・パブリシティ。YouTubeにでもアップしますよ(笑)
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TRUE NORTH 清水ハン栄治監督

──朝鮮半島の「分断」が続いている状態ですが、今後どうなっていくと思いますか。また願いを教えてください。

本作では「政治や外交はこうあるべき」という主張はあえて控えています。複雑化しすぎて僕自身も正解は分からない。ただ「人権はこうあるべき」というのは強く訴えたかった。この映画の中で描いたように、北朝鮮の強制収容所の中で、子供までもが生きるか死ぬかの生活をしています。無実の人々がそういう状況に陥っている現状は、誰がなんと言おうと絶対に間違っている。その点を掘り下げて伝えていくのが自分の仕事だと思っています。

拉致被害者の人権ももちろん大事ですし、帰国事業で北朝鮮へ渡った人たちの人権も大事。北朝鮮国民の人権も同様です。

そういったことに関心を持つ人たちの裾野を広げるためにも、『TRUE NORTH』をきっかけに世界中の人権団体とコラボして新しい風を吹かせなかればいけない、と思っています。


前編:北朝鮮の強制収容所の「家族」を描く衝撃アニメ映画 10年越しの制作秘話


清水ハン栄治◎1970年横浜生まれ。「難しいけれど重要なことを、楽しくわかりやすく伝える」をモットーに映像、出版、教育事業を世界中で展開。TEDレジデント、University of Miami MBA、Search Inside Yourself講師、Cultivating Emotional Balance講師、Wim Hof Method講師。著書に「HAPPY QUEST」(A―works社)がある。 東南アジアのアニメーターのネットワーク「すみません」代表。ウェブサイト。 
映画公式サイトはこちら

文=督あかり 写真=Christian Tartarello

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