『TRUE NORTH』から。強制収容所で暮らすことになった主人公ヨハン
──なぜ3Dアニメにしようと思ったのですか。
私はこれまで漫画を海外で出版したり、ドキュメンタリー映画を制作したりしてきました。「次は何をしたいか」を考えると、漫画の映画=アニメという考えになりました。アニメの力ってすごいですよね。視聴者がアニメのキャラクターに没入する感覚は、他の表現方法に比べてとても強いと思います。ちびまる子ちゃんやモアナのように、みんなが愛くるしく思うキャラクターが、昭和の日本だったり南太平洋の離島に存在するのではなく、北朝鮮の強制収容所にいたとしても同様の反応をするのか? と考えました。
これまで北朝鮮を題材にしたドキュメンタリーは多くあったけれど、全編アニメ映画という作品はなかったと思います。
3Dアニメを作ったのは、若くて優秀なインドネシアのアニメーターたちです。25人ほどのフリーランスの人たちにお願いして、6年ほどかかりました。そのために僕自身もインドネシアに7年間移住して言語も学びました。
──本作に出てくる強制収容所では、わずかな食べ物が支給されていましたが、どんな食べ物でしょうか。
脱北者の証言や人権保護団体の情報に基づいていますが、とうもろこしのお粥や、レタス1、2枚を茹でて塩を入れたスープなどが少量出ていたようです。最近では、収容所外でも新型コロナウイルスの影響で、一般の人たちが野菜などを売買する市場も閉鎖されるなど、影響が広がっているようなので、収容所の収監者たちがどんな過酷な環境にあるかは想像しがたいです。
──『TRUE NORTH』というタイトルには、どんな思いを込めていますか。
そのまま読むと「北朝鮮の真実」っていう意味合いですよね。このポスターを横向きにすると、北朝鮮の国旗を表しています。もう一方で「TRUE NORTH」には英語の慣用句で、生きていく本当の意味を見つけるための「羅針盤」という意味合いがあります。ポスターを縦にして「自分はなんのために生まれてきたのか」と、存在意義を探している少年の姿を表現しました。
自分自身もこの作品を手がけることで、自分の「TRUE NORTH」を見つけられたと思います。それはすごく幸せなことです。