COVID-19もSARSと同様に、感染者はある程度の免疫を獲得すると仮定できますが、それがどれほどの免疫力を発揮し、どれほどの期間持続するか、また個々の感染者ごとにどのように判断するのが最善かについては、未だ十分には解明されていません。この状況が、現在、抗体検査とワクチンの開発に大きな影響を与えています。
抗体検査は、生体防御をもたらす抗体の濃度、およびその濃度における免疫の持続期間に基づき有効な検査結果を導きます。上記二つが解明されれば、COVID-19の感染拡大を抑制する強力なツールとなる正確性の高い抗体検査の開発が可能となるでしょう。昨今、抗体検査は世の中で実施され始めており、これは終息へ向けて一歩前進したと言えますが、現時点では抗体検査の結果が“絶対的ではない”ことを理解する必要があります。
偽陽性や偽陰性という結果もあり得ますし、抗体の有無=長期免疫の有無とは限りません。つまり、いま検査で抗体があるとの陽性結果が出たとしても、完全には安心できないということです。終息へ向けた段階で、世間がさらに混乱に陥らないためにも、抗体への正しい理解が必要不可欠でしょう。
効果的なワクチンは最大の武器
一方、ワクチンは、様々な人の間で同様の免疫がつくこと、および、その免疫が同様に持続することに基づき有効性を発揮します。COVID-19に市中感染した際、免疫力や免疫の持続期間に個人差がある場合、ワクチン開発とその潜在的な有効性に大きな疑念が生じます。60%程度の免疫力を獲得できるワクチンと30%程度しか獲得できないワクチン、また免疫が数年間持続するワクチンと数カ月間しか持続しないワクチンには非常に大きな違いがあります。
効果的なワクチンが開発されれば、それは、ポリオ、はしか、おたふくかぜ、風疹やその他の病気との戦いやこれまでの歴史から明らかなように、COVID-19に対する最大の武器となるでしょう。
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抗体および体内におけるCOVID-19に対する免疫反応について、科学的視点から正しく理解することが出来れば、第二波、第三波が訪れたとしても、必ずこのパンデミックは医療従事者や研究開発者等の貢献により制圧されるでしょう。
今日、世界中の科学者や研究者が抗体の機能を解き明かそうとしており、着実に進歩を遂げています。しかし、私たちは現状の抗体検査の結果に対して正しい理解を持ち、安堵することなく、長期戦を視野に入れて日々を過ごすことが求められるでしょう。
連載:ライフサイエンスイノベーションいろいろ
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