だが、パンデミックが続くなかでの事業の再開に向けて準備を進める企業の多くは実際のところ、従業員に抗体検査を受けさせることにあまり前向きではないことが明らかになった。
米コンサルティング会社マーサーが企業を対象に4月下旬から継続的に実施しているインターネット調査によれば、(5月11日までに)回答した企業のうち、現場で働く従業員に抗体があるかを確認するための「血清検査を実施する予定」である企業は、わずか4%だった。
また、これらのうち、ウイルスが存在するかを確認するための「PCR検査を行う予定」だという企業は、(同日の時点で)3%にとどまっていた。
従業員が人との接触によって感染を広める可能性がないか、感染した人に免疫ができているかを確認するため、より多くの人の抗体検査を行うこが有用だと考える人たちもいる。
だが、事業の再開にあたって戦略の一環として抗体検査を実施することを重要だと考えない企業はその理由として、検査の信頼性に関する懸念と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についていまだ分かっていないことが多いことを挙げている。
マーサーのパートナーで臨床サービス・リーダーのデービッド・ジーグ医師は、米国内では地域によって検査能力にばらつきが大きいことから、各地に従業員を持つ企業の場合、社内全体の戦略として検査を実施することは難しいだろうと指摘。次のように説明している。
「戦略の一環としての検査について詳細に検討する企業が増えるなか、各社は抗体検査によって、従業員の間に感染がどの程度広まったのか把握できる可能性があることを理解し始めている」
「だが、(新型コロナウイルスに対する)免疫について現在分かっていることが限られている現状から、その情報が企業の影響力ある決断や行動を支援できる程度もまた、限定的なものにとどまっている」
「診断検査については、調整の取れた検体の回収を行うにあたっての物流上の課題が大きな障害となっている。また、結果が出るまでに時間がかかる場合が多いことも、企業が感染の封じ込め戦略として検査を実施することの価値を低下させている」
企業は抗体検査や診断検査以外の形で、従業員を守るための対策を講じている。最も多くの企業がその例として挙げたのは、「社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)の確保」だ。だが、それは回答した企業の30%が、「従業員が確実に、同僚や顧客との間に適切な距離を保つことは難しい」と考えているためでもある。
また、回答した企業の63%が、「従業員にマスクを提供する方針」と答えている。