1993年、日本初の世界遺産として登録された屋久島は、1周132キロの小さな島だ。九州最高峰、標高1936メートルの宮之浦岳を有することから、亜熱帯から冷温帯までの多様な生物が暮らす。そして、樹齢7200年とも言われる縄文杉が、いまも生きる神秘の島だ。
人が住めるのは、海沿いのわずかな土地だけ。人々は、観光業が盛んになるまでは、漁業や林業を営み、厳しい自然と共生してきた。山の神を信仰し、年に1回、集落の若者が地域の山に感謝を込め、海の幸や焼酎などを奉納し、五穀豊穣や家内安全を祈願する「岳参り」と呼ばれる風習が、いまも続いている。
そんな独自の自然を保つ屋久島で、今年開業10周年を迎えるのが「sankara hotel & spa屋久島」だ。
別荘感覚で滞在できるキッチン付のヴィラスイートと、スパルームにアウトバスが付いたサンカラスイートが各1室、ジュニアスイートが3室、それに通常タイプのヴィラが24室と、計29室。どんなに広い部屋でも最大宿泊人数は3人までだが、それに対してスタッフは約70人、きめ細かなサービスが魅力だ。また宿泊は13歳以上とされており、大人のためのリゾートをモットーとしている。
往復22キロ歩いて縄文杉に出会う
サンカラ(Sankara)とは、サンスクリット語で「天からの恵み」という意味で、その恵みとは、豊かな自然と共生する屋久島そのものにも思える。
「杉の寿命は通常500年程度ですが、屋久島の杉は、数千年もの間生き続ける。なぜだと思いますか?」と、アクティビティマネージャーの大木信介さんが問いかけてきた。私が首を傾げていると、小さな杉の木片を見せてくれた。
大木さんによれば、肥沃な土地で育った杉にくらべて、屋久島の杉は、年輪の間隔が極めて狭いという。養分も水も少ない過酷な環境のなか、必死で根を張るため、成長が遅いのだ。そのぶん、きっちりと目が詰まって樹脂が多く、腐りづらい。それが屋久杉の長寿にもつながっているのだという。
左から縄文杉級の屋久杉、平均的な屋久杉、里の地杉
ちなみに「屋久杉」と呼べるのは樹齢が千年以上のものだけで、それ以外は「小杉」と呼ばれる。江戸時代には年貢として納められた島の杉材は、西日本を中心とする神社仏閣の屋根材として重宝されたという。
屋久島を訪ねれば、その縄文杉を見てみたいという人は少なくないだろう。サンカラからは往復で22キロ、約11時間の行程だ。普段デスクワークで身体がなまり切っている身としては、かなり不安だった。
そんな私のように体力に不安のある方には、前日にスパの施術を受けることをおすすめしたい。スパマネージャーの阿戸亮子さんに相談すると、ボディーワーク・ストレッチというタイ風のストレッチを勧められた。トレッキングの際に使う筋肉や関節を重点的にほぐすもので、怪我の予防にもなるという。施術を通して、その人の体質を知り、その情報は翌日のガイドにも引き継がれるという。
枕元に香らせるアロマは、アーユルヴェーダの考えを取り入れて、体質にあったものが選ばれる。他にも、体質にあったオーダーメイドの食事とセットになったプランも