ライフスタイル

2020.05.14 20:00

新型コロナと人類は「ダンス」で共存? 40カ国語に訳された米対策論文のシナリオ

「コロナウィルス感染者は他の人をどのように感染させるか」を示したグラフ(Tomas Pueyo)



「COVID-19の接触調査と監視チーム」のメンバー、アンカレッジ学区の看護師Bethany Zimpelman(4月16日)。チームは自治体とアンカレッジ学区の看護師で構成される。
(Loren Holmes / ADN)アンカレッジデイリーニュース
-->
advertisement

接触者追跡技術がもし「武漢と同レベル」だったら?


さて今度は、新規感染者は先ほど同様、1日当たり1000人と同じ状況なものの、接触者追跡担当が武漢と同じくらい生産性が高く、5人のチームが1日当たり1件の新規感染者に対応できると想定してみよう。この場合、5000人の接触者追跡担当者がいれば、3日以内ではなく「1日以内に」すべての新規感染者をカバーできることになる。

もちろんこれらの数値はあくまでも概算値だが、各国が必要コストを定量化、最小化する際の大まかなヒントにはなると思う。

これらの概算値からは、その他にも、以下のような多くの学びがあるといえる。
advertisement

・感染が猛威を振るうなか、接触者追跡に注力することは非常に困難だ。4月末に1日当たり約3万人の新規感染者があった米国では、1件当たり追跡担当者15人日が必要だったが、そのためには50万人以上を雇う必要があった。このような規模の雇用を迅速かつ効果的に行うことは非常に困難だ。「ハンマー戦略」が果たす役割の1つは、その数を下げ、接触者追跡担当の対応を少しでも楽にすることだ。

・シンガポールや韓国のように新たな大流行が発生した場合は、感染者追跡チームの能力を超えてしまうため、「ローカル・ハンマー戦略」が必要になる可能性がある。

・もし5人の追跡担当のチームが新規感染者1人を処理するのに3日かかるとすればそれは遅すぎで、多くの感染拡大が起きてしまうだろう。

・アナログでは、特定すべき接触者を全部は割り出せない可能性がある。前掲の写真のアンカレッジの接触者追跡チームの手動プロセスはアラスカにとっては十分かもしれず、米国にとってもある州には先駆的な事例かもしれないが、米国の他州、あるいは別の規模の国では、はるかに効果的なプロセスを手に入れる必要がある。


図26.a:人海戦術による追跡調査

上記の図のように、ボブ(赤い点、感染者)がかなり社交的で、過去2週間で55人の接触者と濃厚接触があったと想定してみよう。接触者追跡担当との会話から、4人の家族についてのボブの証言を取るのは簡単かもしれない。手帳の記録を確認すれば、ボブはさらに、8人の同僚との接触についても話せるかもしれない。さらに4人の友人と夕食を取り、食料品店に行ったことも引き出せるだろう。

さらに監視カメラの映像を確認すれば、追跡担当者は食料品店でのボブの動きを確認してさらに2人の接触者を特定できる。これでボブが接触したのは合計18人。追跡担当者にはボブの仕事上の接触者の電話番号や食料品店の人々の身元もわからないないため、これらの接触者とのコンタクト方法を調べるには、雇用主や店と話す必要がある。これには、ボブ協力が前提となる。

さらにこの18人は接触者の半数に満たず、残念ながら調査には3日かかった。本来、「1日で接触者の70%から90%に対応すること」が理想だ。このプロセスでは、ボブの協力と記憶に頼っているだけで、すべての情報を得るにあちこちにコンタクトをせざるを得なかった上、それでも十分ではなかったのだ。

関連記事:出口戦略は「鉄槌、そしてダンス」? 世界が注目する新型コロナ論
次ページ > 韓国が接触者追跡に成功したワケ

構成・編集=石井節子

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事