出口戦略は「鉄槌、そしてダンス」? 世界が注目する新型コロナ論

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中国・湖北省武漢市や韓国は4月と5月、新型コロナウイルスの感染者を大幅に減らしたとしてロックダウンを解除。一方で、再びクラスタが発見されたことで、早くも第二波の影響が心配されている。39県での緊急事態宣言解除がなされた日本においても、出口戦略は日々議論の中心にある。抑制と緩和のバランスをいかにして取るか。

その一端を担う論理として今世界中の注目を集めているのが、米国のジャーナリストTomas Pueyo提唱の「The Hammer and the Dance(ハンマーとダンス)」である。

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叩きのめし、そして、「踊る」


3月末にTomas Pueyoが提唱した「ハンマーとダンス」。連続起業家の加藤智久氏が中心となり、日本語翻訳も公開されている。

これは、ロックダウンのような強力な対策、「ハンマー」により感染者を徹底的に減少させた後、緩やかにウイルスと共存する「ダンス」の期間に移行する、という新型コロナ収束戦術である。「ハンマー」により初期段階で流行を確実に抑える一方で、マスクや人工呼吸器を確保し医療崩壊を防ぐ「時間」を作り出すことができると主張する論だ。5月5日、西村経済再生担当大臣は全国知事会で「ハンマーとダンス」に言及。新型コロナウイルスに関して多数の提言を行う京都大学山中伸弥教授もブログ内で紹介した。


加藤智久氏

ハンマーの効果


経済活動の停止を伴う強力な対策「ハンマー」の効果については、中国、韓国、ベトナムの3カ国が証明している。中国は1月に1000人、2月に1万人を超える1日当たりの新規感染者数を記録。1月23日以降のロックダウン中は交通機関の停止、住民の外出制限、体温測定の義務化などを実施。食料の買い出しは1世帯につき1人のみ・3日ごとなど詳細に規定し、罰則を設けるなど強力な施策を実行した。結果、4月には1日当たりの新規感染者数を10人程度まで押さえ込むことに成功。同様に韓国、発展途上国ベトナムも「ハンマー」の実施で流行の抑制に成功している。

「ダンス」のカギはIT活用


「ハンマー」が成功した後、社会は徐々に経済との両立を図る。これが「ダンス」であり、経済活動の再開や外出制限の緩和がなされる。ここで重要なのが、感染者と感染経路を把握すること。感染者が少数である内に濃厚接触者を特定、感染者を隔離することができれば、再び「ハンマー」を実施せずとも感染爆発は防げるからだ。
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文=齋藤優里花 企画=石井節子

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