米国ではホワイトハウスがホームページで紹介、また「ニューヨーク・タイムズ」紙が「ザ・デイリー」で引用したほか、日本でも京都大学山中伸弥教授がブログで解説。最近では西村新型コロナ対策担当大臣も記者会見で紹介した。
その収束シナリオの中で、Pueyo氏は、ロックダウンなどの強力な対策を「ハンマー」、ハンマーで叩いた後にもゼロにはならないウイルスとの共存状態を「ダンス」と定義する。そしてカンフル剤としての「ハンマー」は重要だが、その後の「ダンス」でもサステナブルに闘うことが必要、とのロジックを主軸に、多くの論文やデータをベースとした議論を展開している。それが、しばしば権威筋から引用されること、世界で読まれている理由でもある。
具体的にはPuey氏は、コロナ対策決定の指標として「実効再生産数(R=1人の感染者が何人に感染させるかという数値)」を重視する。
対策をまったく行わない場合、この「R」値は約2.5。「ハンマー」のフェイズでは感染者を可能な限り減らすことを優先し、Rを0.5程度まで下げることが必要である。そして、Rを2.5から0.5にするには、人同士の接触を0.5/2.5=0.2に、つまり80%以上減らすことが求められる。
この理論は次に、「ダンス」のフェイズにおける、「R」を「1を超えない」程度に抑えることを前提にした経済活動再開を提案する。「R」を1未満にするためには、人同士の接触を1/2.5=0.4、つまり60%以上減らす必要がある、という。
そして「ハンマーとダンス」の理論は、人同士との接触を「平時の60%以上減らす」努力がおそらく1年以上は必要、と説いていく。
Forbes JAPANでも、著者の許諾を得、一連の記事のうち、「経済の再開に向けて」がテーマの4回シリーズの記事から「接触者追跡の重要性(Coronavirus: How to Do Testing and Contact Tracing)を抜粋翻訳した。以下、新型コロナ理解のための情報として、またコロナ対策を考える上での一資料として紹介する。
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シナリオ:「ボブ」が感染した場合
接触者追跡を巧みに行えれば、感染削減はもちろん、経済の安全な再開のための「ハンマー戦略」から「ダンス戦略」に切り替えることができる。しかし同時に、接触者追跡は非常に入り組んだ問題、とくにプライバシーの問題をはらんでいる。
この問題に取り組む前に、そもそも「接触者を追跡すること」とはどんなことかを理解する必要がある。
感染した人を仮にボブと呼ぼう。ボブが接触した人を、出来る限り多く、できるだけ早く特定したいとする。重要なのは、対象とするのはボブが「出会ったすべての人」ではなく、「感染した可能性のある人」だ、ということだ。
そのためには「接触者追跡チーム」を組織することが必要だ。
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