ビジネス

2020.05.15 07:30

新型コロナ「震源地」の今。危機に立ち向かうアメリカの起業家たち

守屋 美佳
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この状況で転機となったのは、ある一通のメッセージでした。世界最大規模のファッション卸売マーケットプレイス「JOOR」のCEO、クリステン・サヴィラからリンクトインを通して「何か私たちにできることある?」とメッセージを受け取ったのです。

二人は、すぐに意気投合。2万5000以上のアパレルブランド、テック企業、政府系団体とも提携しているJOORは、Worldwide Supply Chain Federationとすぐさまパートナーシップを結び、医療用防護服に特化したバイヤーとサプライヤーを繋ぐプラットフォームをJOORの特設サイトとして新たに公開。

ここでは、医療施設のバイヤーや寄付者が医療防護服のスペック、製造業者証明書や生産工場の情報、納期タイミング、値段といった情報を入手して、購入できる仕組み作りを提供しています。

最後にリサは、現在彼女が感じている使命感をこう話してくれました。

「政府が国民の為に提供すべき安全保障や医療システムが崩壊している中で、マイナスな発言をするだけでは、なんの解決策にもなりません。自分たちに今、なにができるか。人々の為にどう役に立てるのかを考えて、行動に起こすべきだと強く感じています」

仕事をしながら窓の外にマンハッタンのスカイラインを見ていると、たとえプロジェクトがキャンセルになっても、安全な環境で自粛できること自体が本当に恵まれていることだと気づかされます。特に、ニューヨークではホームレスや急な自宅待機から深刻化したDV(家庭内暴力)で困っている人たちがたくさんいます。

そう思うと、映画や読書、NetFlix観賞、寝る暇も惜しくなり、何かしなくてはという衝動に駆られていてもたってもいられません。私自身もなにかできることはないかと、ニューヨーク市内のDV被害者を支援する活動する友人に協力してもらい、ニューヨークのシェルター施設に片っ端から連絡しました。すると、家庭内暴力に苦しむ女性たちがなにも身の回りのものも持たずに、シェルターに避難してくるという新たな問題までもが浮き彫りになって来ました。

そこで、アメリカ進出のサポートをしている靴下屋の『タビオ』の協力を得て、シェルターで最も必要とされている必需品である靴下630足を10以上のDV被害者のためのシェルターにご寄付いただく運びとなりました。

まさに、他の起業家たちも口を揃えて言及していたように、全てはフラストレーションと、一つの行動から。成し遂げたいミッションや価値観がぴったりあい、助けてくれそうな起業家仲間やパートナーたちを見つけ、協力しあえれば、なんでも成し遂げられます。

「そんなこと、無茶だ」という人たちには耳をかさず、やって見せてあげるような態度がちょうどいいのではないでしょうか。今こそ、ビジネスを動かす人々の、世の中を一緒に良くするムーブメントが将来をつくる土台になると感じています。


まつい・あやか◎AYDEA創業者。東京生まれ。14歳で渡米、ボストン大学にて国際関係学・経営学を専攻。上海の政策シンクタンクにて外交政策における研究者として参画した後、楽天本社にてEコマースのコンサルタントとして従事する。その後、シリコンバレーに渡り、グローバル企業の日本進出と日系企業の米国進出におけるブランド戦略・マーケティングに携わる。2018年に独立し、ニューヨークに拠点を移してAYDEAを設立。

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