ビジネス

2020.05.15

新型コロナ「震源地」の今。危機に立ち向かうアメリカの起業家たち

私、松井綾香は、「AYDEA」代表としてニューヨークを拠点としながら、日系企業のアメリカ進出におけるマーケティング支援と、グローバル企業の日本進出のサポートしてきました。日本の魅力をアメリカ人の価値観やライフスタイルに寄り添いながら響くように伝え、異文化への理解を深めながら経済を活性化することをビジョンに掲げて活動しています。

ニューヨークでは、ロックダウンが3月22日から始まりました。弊社でも日本への出張が中止、プロジェクトのキャンセルも相次ぎ、目まぐるしい変化が絶えません。そんな中、新たな現実を受け入れて課題を見据え、想像力を発揮しながら、今自分が何をすべきなのかを考え、それを行動に移していくことの重要性をひしひしと感じてます。

このコロナショックを悲観的に捉えることなく、ピンチを新たなチャンスと社会貢献に機転していく3名のアメリカの経営者に話を聞きました。ぜひアメリカで起きている動きをご紹介できたらと思います。

ファッション業界の雇用を守りながら、医師の命を救う


医療現場でマスクが不足しているという現実への怒りを原動力に、ファッション業界の雇用を守りながら医師たちの命を救う手段を見出したのが、アマンダ・カーティスです。

もともとファッションデザイナーとして活躍していたアマンダは、アパレル生産管理システムを展開する「N.A.bld」 と、新進気鋭のファッションデザイナーと消費者を繋ぐ「Nineteenth Amendment」の共同創業者であり、代表を務めています。

アマンダの夫は、ハーバード大学病院のドクターとして、新型コロナウイルス対応の第一線で闘っています。3月13日、感染者数が急激に伸び始めた矢先に、病院では防護具が不足していることを理由に、米国疾病予防管理センターがバンダナをマスクの代わり着用するよう支持が出されたことをアマンダは耳にしました。

本来ドクターたちは一人の患者を診察するごとにマスクを替える必要がありますが、ひとつのマスクを12時間以上におよぶシフトで使い続けなくてはならない状況になっていました。

「そんな非衛生的で危ない中働き続けるなんて、ありえない」と怒りを感じたアマンダは、N.A.bldの社員と共にわずか5日間で、アパレル生産管理システムを、布マスクの生産と供給を管理するプラットフォームとしてピボットさせました。

また、デザイナーチームを中心に、ハーバード大学と関係のある医療機関からの助言をもとにマスクの型をつくり、アパレル縫製工場にマスクキットの提供をスタート。

マスクの生産を通して、工場で働く従業員の雇用を守りながら、病院で働く医師をサポートすることを可能にしました。

N.A.bldとNineteenth Amendmentのネットワークを駆使し、アメリカ中のファッションブランドや、百貨店のメイシーズ、ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニーなどの大手企業からアパレル工場、自宅で内職の縫製作業できるような個人と組み、1週間に82万枚以上のマスクを縫製できるまでのキャパシティを確保したと言います。

外出自粛における制度が厳しくなるにつれ、大型工場は社員に縫製機械を自宅に持ち帰らせることで、内職をできるような環境を与えました。この動きに、コットン生地を寄付する企業も現れ、マスクの生産コストも抑えることにも成功しました。
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