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名古屋大学の笹原和俊氏は、数理モデルやビッグデータ分析を駆使する計算社会科学の手法で「SNSを通じたコミュニケーション」の仕組みと関わろうとする科学者だ。笹原氏は、「新型コロナのインフォデミック(不確かな情報の氾濫)を克服することはこのパンデミックを乗り切ることと同様に重要である」という。

「アフター」、あるいは「ウィズ」・コロナの世界に生きざることを運命づけられたわれわれは、フェイク(偽)ニュースをどう見分け、どう情報と関わっていけばよいのか──。情報学の専門家の立場から、笹原氏に以下、ご寄稿いただいた。


新型コロナウイルスは無言で私たちの日常を奪い、現代社会の抱えていた問題を露見させた。医療や教育、グローバル経済や政治、格差や偏見などの問題である。今、新型コロナ危機後の世界(アフター・コロナ)において、これらの問題をどう克服し、社会をいかに再構築するかについての議論が始まっている。アフター・コロナまでの道のりは長く険しいものになるかもしれないが、このパンデミックから最大限の教訓を引き出し、未来を創造するための糧とすることは重要だろう。

アフター・コロナでは、情報生態系のあり方がガラリと変わるし、変える必要があると思う。現在、新型コロナ感染の拡大防止のために、ソーシャル・ディスタンシングの取り組みが行われ、世界中で社会的接触の抑制が求められている。パンデミックの収束には必須の戦略だが、社会的生物である人間には厳しい面もある。

「携帯電話のアンテナが放火」される事件も


このような状況でも、「今、ここ」の制約を越えて人々をつなぐ役割を果たしているのが、SNSなどのソーシャルメディアである。バーチャルな社会的接触とはいえ、オンラインのコミュニケーションにどれだけ多くの人が救われているかは想像に難くない。実際にSNSで支援の輪が広がったり、国境を超えて交流が生まれたりと、非常事態においてもバーチャルなつながりが新たな価値を紡いでいる。

しかし一方で、ソーシャルメディアは問題を引き起こしてもいる。2016年のブレグジットや米大統領選の際に、フェイク(偽)ニュースがSNSで氾濫したことが問題になったことは記憶に新しい。


SNS上で「エコーチェンバー」現象が起きる様子。時時刻々、赤(同じ意見)は赤へと、青(同)は青へと収束していくことがわかる(注2)https://osome.iuni.iu.edu/demos/echo/ より再録

コロナ禍の現在は、「お湯が新型コロナに効く」等の偽の予防法や「新型コロナの感染は5Gの電波のせいだ」等のトンデモな陰謀論が拡散し、またしてもSNSがデマの温床となっている。英国ではこの偽情報によって、携帯電話のアンテナが放火される事件も生じている。新型コロナは私たちの健康と生活に直結する問題なので、真偽とは関係なく、時には善意で、思い込みに合致するうわさや感情を刺激するデマは容易に拡散されてしまう。

加えて、「いいね!」の数やリツイート数など、SNSでは他者の反応が可視化されてしまうことも、新型コロナに関する偽ニュースを増幅する要因となっている。そして、拡散された偽ニュースは、同質性の高いコミュニティーの中でこだますることになる(エコーチェンバー、上図参照)。

文=笹原 和俊

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