インフォデミック克服のためにも「ワクチン」を
新型コロナのインフォデミック(不確かな情報の氾濫)を克服することは、このパンデミックを乗り切ることと同様に重要である。そして、アフター・コロナで社会を再構築するためには、インフォデミックに頑健な仕組みを実装し、情報生態系をアップデートすることが重要だと考える。
そのためには、情報の透明性を高めたり、つながりの多様性が促進されたりするような情報技術が求められるだろう。情報生態系の多様性こそ偽ニュースの拡散を緩和する最善策と考える。早すぎるオンラインコミュニケーションの時定数を変える(低速ギアにする)ことも一考に値する。同時に、私たち一人ひとりのメディアリテラシーの向上も求められる。それはインフォデミックの「ウイルス」に打ち勝つための「ワクチン」となる。
米ハーバード大学の研究によると、断続的なソーシャル・ディスタンシングは2022年までは必要だという(Kissler et al. 2020, Science)。この予測は外れてほしいが、当面、私たちはウィズ・コロナの世界で生きることを覚悟しなければならないだろう。新型コロナで明らかになった社会制度の問題にせよ、情報生態系の問題にせよ、できることから着手し始め、アフター・コロナに向けて歩みを始めなければならない。アフター・コロナが、すべての人にとってより良い世界になることが確信できれば、「#おうちにいよう」の掛け声で私たちは今をがんばることができる。
笹原和俊◎名古屋大学大学院情報学研究科講師。専門は計算社会科学。主著に『フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ』(化学同人)。