──結果が目に見えて出にくいため、サステナブルな取り組みに積極的になるのは難しくも思えます。そういった意識を変えるにはどのようなアプローチが必要だと考えますか。
下川:一番は知ることですね。ECOALFは10年前に創業したときからサステナブルな素材を使用した製品作りをしていました。しかし当時はフリースのアイテムを生産していたんですね。フリースはカジュアルブランドにおいてベストセラーであり、ECOALFでも売れ筋でした。
でも5年前、創業者のハビエルがマイクロプラスチックを知り、フリースの生産をやめることにしたんです。フリースを家庭で洗濯することでマイクロプラスチックが生まれ、水に流されてそれを食べた魚を自分たちが食べているという現実を知ったんですね。新しい情報に関心をもち、次のアクションをとることがサステナビリティに関わる人たちの一番の原動力になっているのかなと感じます。
海洋プラスチックゴミを再生し資源として活用する他にも、リサイクルウールや廃タイヤを用いた製品作りをしている。シューズの価格は11000円~16000円が中心。
砥川:人間が出すCO2のうち10%はファッション業界から出ており、20年前と比べて服の製造量は倍になっている代わりに1着の服を着る期間が短くなっている。その結果約8割の服は作られても着られることなくそのまま捨てられてしまう。
そういった事実を知ると、製造の仕組み自体が環境問題に関わっていかないといけないし、もう少し能動的に選択することにもつながると思います。人々の関心は大きくシフトしつつありますが、そのスピードをもう少し速めたり、ちゃんとビジネスとして成り立つことを証明していかなければ、と思いますね。
The Breakthrough Company GOの砥川直大氏。クリエイティブディレクターとしてブランディングに携わる。写真にて着用しているシャツは私物のECOALFのもの。
──ECOALF日本上陸のポスターが話題になっていましたね。
砥川:もともとは、「売れば売るほど地球が綺麗になるブランドの服を売りませんか」という採用広告を出そうとなっていたんです。でもちょっと待てよ、と。サステナブルファッションブランドとして、広告はどうあるべきか、と考え直してみたんです。そこから新しい資源を使わないというECOALFの特徴を表現した広告ができました。
渋谷駅構内に掲示したECOALFの広告。「吉野家」、「メルカリ」などの他社が以前に使用した広告を再利用してポスターを制作した。他社の商品が透けて見えるという斬新さ。
ゴミを回収して服を作るように、広告を再利用して広告を作る。この企画趣旨に賛同する企業から掲出済みの広告、または在庫になってしまった未使用の広告を頂いて、それらを塗りつぶしてECOALFの広告を作りました。
5年前、10年前だったら「他社が自分たちの広告を塗りつぶす」なんてありえないですよね。でも、今回協力頂いた企業の方々はそうではなく「再利用を可視化するための広告」として快諾して頂きました。まだ日本では無名のブランドに名だたる企業が協力して、こうした動きをすること自体が、社会の意識が変わっていることの表れだと思います。
掲出後に「協力してる企業もかっこいい」という声がツイッターなどであったのは嬉しかったですね。そういうマインドが共有される時代になってきたということがひとつの大きなメッセージだと思います。