ビジネス

2020.03.30

子どもが自発的に宿題のやる気を出す、コクヨの大ヒット文房具の開発秘話

コクヨ株式会社 ネットステーショナリーグループリーダー 中井信彦氏


──製品のコンセプトを正しく伝えるために、どのようなアプローチを取ったのでしょうか?

この商品は『しゅくだいやる気ペン』の公式サイトのみで販売しています。これはコクヨでも前例がほとんどないこと。注文時には必ず公式サイトを経由するので、ファーストビューで「かきたくなる。ほめたくなる。」と、商品の本質を訴求するようにしました。

ページを開くと、「子どもが勉強をしている姿」の動画が目に飛び込んでくる。商品の詳細を説明するより前に、僕らが幸せにしたい顧客が子どもであることを表明し、共感してくれた人にこそ買ってほしいという思いを込めました。

──理解度を高めるために、あえて販路を絞るというのがユニークですね。

『しゅくだいやる気ペン』を一般の販路に乗せた場合、文具店や家電量販店に流通するでしょう。ただ、各店舗の仕入担当者は、この商品の置き場に迷うと思うんです。文具といえば文具ですが、家電といえば家電ですし、あるいはスマートフォン向けガジェットでもありますから。

コンセプトも含めた「新しい商品」の場合、使い方や効果への期待を来店客に尋ねられたとしても、販売員の方は説明しきれないでしょう。だからこそ、まずは僕たちが「商品がどのように認知されるか」まで、しっかりと設計しなければいけないと考えたのです。

「顧客との向き合い方」が、製作から販路までを左右する




──発売後の反響はいかがですか?

おおむね好評です。子どもからの「夏休みの宿題が早く終わりました!」なんてうれしいお手紙や、親からも「ほめるのが上手くなった」という感想をいただいています。

──なぜ、ほめるのが上手くなれたのでしょうか。

一例ですが、子どもが宿題の答えを間違えたとしても、その日に頑張った分の「やる気パワー」を可視化できますから、親は「ここは間違えちゃったけれど、今日はこれだけ頑張ったね!」とほめることができます。すると、子どもは「また明日も頑張ろう」と思えるようです。
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執筆/XD編集部

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