ビジネス

2020.03.30 14:30

子どもが自発的に宿題のやる気を出す、コクヨの大ヒット文房具の開発秘話


「ある問題の正誤だけを見て怒らない」というのも、僕たちが『しゅくだいやる気ペン』を通じて伝えたかったことです。学習の過程や姿勢から親子のコミュニケーションが生まれ、それが子どものモチベーションアップにつながり、結果として学力が備わっていく。その構想が現実になり、顧客の声として伝わってきたのはうれしかったですね。

──今回の開発、売り方、伝え方を通じて、中井さんが「得られたもの」は何だと思いますか?

仮説と検証を繰り返していくことの強みですね。

自分が思いついたアイデアは、どのような形でもいいから具体化して、顧客となり得る相手に一度は投げかけてみることが大切です。そこで得た手応えをきっかけに、次のステップを考える。それを愚直に繰り返していくことで、作りたいものの「本質」が見えてくるはずです。

検証していく中で、そもそも自分が何を課題だと感じ、商品という形にして投げかけたかったのかも見えてくる。それに気づくことで、商品の価値を深堀りできます。



──頭で考えるだけでなく、手応えを感じつつ進んでいくのが大事なんですね。

そうですね。しかし、なによりも大事なのは、商品やアイデアの中心にはユーザーがいることを常に意識することです。そして、ユーザーがその商品を使って、どのような幸せを得られるのかを意識する。このような製品の「軸」をブレさせないことも重要でしょう。

『しゅくだいやる気ペン』の開発初期のように、ある社会課題を想定して複雑なアプローチをしても、実は解決にならなかったり、幸せにできなかったりすることがあることも、知っておくべきでしょう。商品のイメージに送り手と受け手の間で齟齬が起きないように、ユーザーが抱く感覚と、商品が持つ期待値の距離感を、しっかり推し量ることも大切です。

僕らはまさに今も「顧客といかに向き合うか」という旅の途中にいます。『しゅくだいやる気ペン』にいただいた声を消化し、さらに顧客が幸せだと思える方向へ進んでいきたいですね。

執筆/XD編集部

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