黄:現実的に、治療薬、ワクチンの開発にはどれくらいの時間がかかりそうなのでしょうか?
尾原:2月12日時点で、WHOはワクチン開発に18カ月かかる見通しだと発表しました。しかし個人的には、不透明だと言わざるをえないかな、と。というのも、ウイルスは世代交代が早く、変異していく可能性があるため、現在開発している治療薬やワクチンでは、効かなくなることも考えられるのです。
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また、症状を治す「治療薬」が必要なのか、感染を食い止める「ワクチン」が必要なのか、どの程度の数が必要なのか、どのように量産体制を確保するのか…など、問題は多方面に存在しています。断言はできませんが、一気に状況を変える救世主の登場はあまり期待しないほうがいいのかなと思っていますね。
「超監視社会」だからこそ実現した対策の数々
治療薬、ワクチンの開発が進む一方で、「対策」の最前線ではどのような施策が行われているのだろうか。『アフターデジタル ─オフラインのない世界に生き残る─』の著者であり、上海に勤務する藤井保文氏が、中国の感染対策の現場を説明する。
藤井保文(以下、藤井):中国らしいソリューションだなと思ったのが、感染リスクを表示するアプリのリリースですね。このアプリでは、自分の乗車した公共交通機関を入力すると、その電車に感染者がいたかを特定してくれるんです。実際、このアプリを用いて出社のや来店の可否を決める場所が増えてきいます。
尾原:中国は「超」がつく監視社会としても知られていますが、アプリのように情報を開示することで、感染リスクを軽減することにもつなげている。
黄:中国の特徴として、先端テクノロジーを官民が協力して素早く活用していることが挙げられます。たとえば、危険度の高い地方ではドローンを活用し、街を出歩いているひとを見かけたら「家に帰れ」と指示をしたり、検査の受け方を周知したり。
他にも、中国政府が外出の許可証を紙からデジタルに変えたいという要請を出したところ、アリババ(阿里巴巴)が1日で電子版の許可料を作ったんです。このスピード感には全国民が舌を巻きましたね。中国の巨大IT企業がスピード感を持ってコラボレーションしているのは、日本にはない動きだなと感じました。