そうした消費者行動の変化と、自社のビジネスに起きている大きな変化を実感している企業のひとつが、会員制倉庫型ストアのコストコ・ホールセールだ。特に米疾病対策センター(CDC)が米国内での感染拡大の可能性を警告した2月最終週以降、需要が急増しているという。
同社の既存店の売上高は同月、前年比11.7%増と大幅な伸びを記録した(今年度第2四半期までの26週間の既存店売上高は、為替の変動とガソリン価格の影響を除いて平均7%増)。
さらに、こうした傾向がみられるのは米国だけではない。カナダの既存店売上高は同10%増加。その他各国でも、平均で同13.5%増えているという。コストコは世界各地で785店舗を運営しており、そのうち米国とプエルトリコに合わせて546店舗を展開。日本や韓国、台湾、メキシコ、スペインなどにも進出しており、昨年は中国にも第1号店をオープンした。
浄水器や屋外用家具も──
消費者が買いだめしているのは、ボトル入り飲料水や消毒・除菌のための商品だけではない。リチャード・ガランティ最高財務責任者(CFO)によれば、浄水器や食品の保存容器などもよく売れているという。同社は現在、需要の高い商品の一部については購入数を制限している。
ガランティCFOによると、消費者の買い物1回当たりの平均購入額は減少している。だが、意外なことに、屋外用家具など必需品ではない商品にも、売り上げが伸びているものがあるという。
需要の増加が同社の売上高を押し上げるなかで懸念されているのは、現在の状況に対応するための安定的な供給を維持できるかどうかだ。同CFOは、「私たちは同時に、こうした状況がピークを過ぎ、安定し始めてくれることを願ってもいる」と話している。
コロナウイルスの感染拡大に対する懸念が、多くの国の消費者を「非常用の備蓄」に走らせている。米調査会社ニールセンは先ごろ発表したレポートのなかで、一部の市場ではすでに手指消毒剤と医療用マスクの在庫が切れており、十分に供給されるようになる時期は不明だと指摘している。
米国では2月22日までの1週間に、手指消毒剤と医療用マスクの前年同期比での売上高が、それぞれ54%、78%増加した。体温計も同34%増えたという。また、すでにコストコが明らかにしているとおり、缶詰や小麦粉、砂糖、ボトル入り飲料水、フルーツスナックなどの常温保存可能な食品、サプリメントや救急箱などの需要が急増していることは、ニールセンのデータにも示されている。
消費者のこうした行動によって、大きな恩恵を受けているとみられる企業もある。その1社が、キャンベルスープだ。マーク・クローズCEOは3月4日、缶入りスープその他の商品の需要の増加に対応するため、増産を計画中であることを明らかにしている。