しかし、いざお目見えすると、SNSでは「ダサい」と酷評されている。世界から注目される場で「これはないんじゃないか」「着たい人がいるのか」などの意見がSNSでは見られる。
白いジャケットに赤色のボトムス。1964年の東京オリンピックの日本選手団の「日の丸カラー」の公式服を上下反転させたような色合いだ。今回の女性用ボトムスには、スカートではなく、パンツかキュロットが採用された。ジャケットには日本古来の伝統柄が陰影でプリントされていたり、通気性や防シワ機能の搭載など、こだわりは随所に見ることができる。しかし、やはり、進化する他国の公式服から遅れをとっている感が否めない。
日本のオリンピック公式服はなぜ「ダサい」と言われるのだろうか。JOA(日本オリンピック・アカデミー)会員で、服飾史家の安城寿子氏に話を聞いた。
2020年東京オリンピック・パラリンピックの日本代表選手団の公式服装(開会式用)
カジュアル・多様化が進む公式服。日本は?
──まず、2020年夏の東京オリンピックの公式服装についてどのように評価していますか。
個性やインパクトを狙い過ぎて珍妙なものになるより良かったのではないかというのが初見の感想でした。ただ、公式服の良し悪しは、選手団が集団でそれを着て行進した時にどう見えるかを抜きに語れないので、いま評価を決めるのは早過ぎると思います。赤と白のコントラストは遠景からとらえた時に美しく映えますから、7月の開会式を見たら「悪くないね」という反応になるかもしれない。過去に、発表時と開会式の時とで印象が大きく変わった公式服の例は少なくありません。
その上で、個人的に残念だったのは、公募条件の緩和が活かされなかったこと。JOCの公募では、これまで、ジャケット、ボトム、ワイシャツなどが必須アイテムに指定されていましたが、今回、おそらく初めて、その縛りがなくなりました。つまり、パーカーもTシャツも浴衣でもOKだった。諸外国の公式服はカジュアル化・多様化が進み、昔のようにテイラードジャケット必須ではなくなってきていますから、日本もそういう変化を意識し条件を緩和したのかと肯定的にとらえていました。