これらは1980年代に日本に起きたのと同じ問題だ。中国は今、当時の日本と同じような局面にある。
中国のソーシャルメディアでは最近でも、貿易戦争が大きな話題の一つだ。同国経済は輸出に依存してきたことから、成長鈍化の原因になっていると批判されている。また、この貿易戦争は同国のテクノロジー企業が世界市場で競争する力を損なっている。
ただ、米中両国が互いのメンツを立て、国内の国家主義的な感情を和らげる方法を見つけることができれば、この問題は解決されるだろう。
より深刻な問題
一方、中国には不動産バブルをはじめ、複数のバブルという大きな問題がある。貿易戦争とは異なり、これらは長期的な問題だ。
中国は労働力の豊富なベトナム、スリランカ、フィリピン、バングラデシュといった国々と競い合おうとする中で、婚姻率の低下とそれに続く出生率の低下、労働人口の減少という問題にも直面している。
人口の減少はいずれ、好ましくない「依存率」の上昇にもつながる。多くの高齢者の生活を、あまりにも少ない労働人口で支えていかなければならなくなる。そして、これは消費支出にも影響を及ぼすことになる。投資主導から消費主導型経済への転換を目指す中国の取り組みにも、悪影響を与えかねない。
日本は1980年代以降、米国との貿易摩擦が解消した後も、「失われた30年」においてこれらの問題を抱え続けている。だが、中国の問題は、より一層深刻なものになる可能性がある。
さらに、中国にはインフラ投資によるバブルという問題もある。インフラ投資は国内で力強い経済成長を支え、国外では南シナ海の支配と、中東の石油とアフリカの資源を抑えるための海路の確保という野心を後押ししてきた。
国外における中国主導のインフラ・プロジェクトには、地元社会のニーズに応えるように設計されたものもあるが、一方では官僚の野心を満たすだけのものもある。そうした事業の問題点は、採算が取れないことだ。つまり、それらによる経済成長は、持続可能なものではない。
旧ソ連は1950年代、ナイジェリアは1960年代、日本は1990年代に、インフラ・プロジェクトによる経済成長を目指した。だが、いずれもうまくはいかなかった。バブルは破裂し、膨大な額の債務が残された。
そして、中国のもう一つの大問題となるのが、この債務だ。同国には実際には、どのくらいの債務があるのだろうか?政府債務の対GDP(国内総生産)比は、公式には47.60%とされており、高い水準ではない。
だが、本当の金額を明らかにするのは難しい。国営企業に融資しているのが、国営の銀行だからだ。世界の主要な金融機関で組織する国際金融協会(IIF)は、この比率は300%に上るとの見方を示している。
また、より悪いことに、政府が貸し手であり同時に借り手でもあるということは、信用リスクを分散させるどころか集中させている。それは(ギリシャの例にみられるように)、システミックな崩壊の可能性を生み出す。
政府が貸し手と借り手の2つの役割を担うことは、政府の第3の役割(規制当局として、貸し手と借り手が従うべき規則を定める)と矛盾する。そしてこれは、金融危機が起きた場合の、債権者の救済を複雑なものにする要因だ。