日の丸カラーの東京五輪公式服は「ダサい」のか。服飾史家はどう評価?

1984年ロサンゼルスオリンピックの開会式で行進する日本選手団 (Getty Images)

「日の丸カラー」は時代遅れか?


SNSでは「日の丸カラーである赤と白にこだわることはないんじゃないか」「日本から連想されるイメージカラーは赤白以外にもあるはず」といった意見もある。たしかに前回大会でのオーストラリア代表公式服は、爽やかなミントグリーンを基調とし、国旗の色を用いずに、オーストラリアの豊かな自然を表現していた。
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──日本の公式服がファッショナブルでない原因は、日の丸カラーにあるのでしょうか。

今のご質問は、赤と白を使ったデザインはダサくなるのかというのと同じですが、そんなはずはありません。赤と白に限らず、特定の色を使うとダサくなるなんてことはない。問題があるとすればその使い方です。赤と白はすっきりしたコントラストを作り出すのに効果的ですから、使い方次第でいくらでもいいデザインになる。その点、国旗が日本と同じ赤白二色のカナダの公式服は参考になるかもしれません。


2016年リオデジャネイロオリンピックでのカナダ代表 (Shutterstock)
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国旗や国を象徴する色を公式服に取り入れるのは多くの国がやっていること。そういえば、三宅一生の「仮想五輪ユニフォーム」というシリーズも各国の国旗色にちなんだデザインでした。ナショナルチームだからナショナルカラーを取り入れる。これは、国威発揚とかナショナリズムとか御大層な話ではなく、チームユニフォームはチームを象徴する色にするという今も昔も変わらないユニフォームの基本形です。

オランダは公式服に必ずオレンジ色を取り入れていますが、毎回取り入れ方が違って面白い。日本でも、90年代には、全体を白でまとめてシャツの襟と帽子のつばだけ赤くするなど、新しいアレンジが試みられました。ああいうアレンジの幅を広げていけばよかったのにと思います。

実は、かつて「日の丸カラーはもう古い」という議論がJOC周辺で盛り上がったことがありました。しかし、結局、「じゃあどういう方向性で行くか」という明確な指針を示せないまま、虹色になったり花柄になったり紺色になったりしました。日の丸カラー以外の可能性は否定しませんが、具体的な代案もなく、オルタナティブを求めても迷走しかねないということは強調しておきたいですね。


2016年リオデジャネイロオリンピックのアメリカ代表 (Shutterstock)
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構成=河村優

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