「ながら運転」を自動制御で防ぐ 保険会社提供の「掘り出し物サービス」 

Tero Vesalainen / Shutterstock.com


保険会社が提供する掘り出し物サービス

何か有効な対策や手段はないものかと見渡してみたら、損害保険会社が提供するサービスにうってつけなものが見つかった。

例えば、三井住友海上火災保険の法人向け「FOUR SAFETY(フォーセーフティー)」。このサービスを導入すると、従業員が運転中にスマホを操作しようとしても制御されて、操作できなくなるのだ。

導入といっても大げさではなく、スマホにアプリをインストールして、Beacon技術搭載の専用端末(シガープラグ型)を車にセットするだけでOK。専用端末をセットした状態で車のエンジンをかけると、端末から発信された電波を受信し、自動的にアプリが起動する。一定速度(約20km/h)を超過すると、アプリがスマホ操作を制御し、利用できなくなる。つまり、スマホを使いながらの運転を、「転ばぬ先の杖」として予防する位置づけだ。

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[出典]三井住友海上保険 「FOUR SAFETY」提案書


制御と言っても、メールや電話やアプリを立ち上げようとしても、詳細画面には推移せず、「使えなくなる」というもの。車のエンジンを止めれば、スマホの操作は復活し、電話を掛けたり、インターネットやアプリを使ったりすることができるようになる。スマホを「正しく使う」習慣づくりに役立つわけだ。

ちなみに、Beaconとは、Bluetooth機能をオンにしたスマホの位置を特定する発信機のことで、信号を数秒に1回、半径数メートル範囲に発信する。その技術を応用し、Beaconから発信される電波の受信の有無により、自動でアプリを起動したり終了したりするしくみだ。

「従業員が専用端末を勝手に外してしまうこともあるのでは」とも思ったが、事業主(管理責任者)は従業員ごとにスマホの操作が制御されているかを確認できるシステムになっていた。また、専用端末には加速度センサーが内蔵されており、急加速や急減速等も検知できるため、データをもとに従業員の安全教育や指導にも使えそうだ。

気になる導入にかかるコストは、専用端末を購入するのに1台あたり4380円(税抜き)のみであり、ランニングコストはかからない。またスマホのアプリは無料だが、専用端末の通信料はかかる。

「御社の保険契約者だけしか利用できないのでは」と三井住友海上火災保険に尋ねたところ、法人であれば同社で自動車保険を契約していなくても利用可能とのことだった。

ちなみに、商品名の「FOUR SAFETY」の由来は、運転中のスマホ操作を制御することで、「従業員」「企業」「社会」「未来」の4つの安全を実現したいという願いを込めて名付けられたとのこと。同社の所属する「MS&ADインシュアランス グループ」では「事故のない快適なモビリティ社会をつくること」を重点課題として推進していて、持続可能な開発目標(SDGs)を道しるべとするなかでの取り組みだという。

保険会社の提供するサービスには、大きな開発コストがかかっていながらも、無償で提供される「掘り出し物サービス」が数多く存在する。これからも、また機会を見て紹介していきたい。

連載:ニュースから見る“保険”の風
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文=竹下さくら

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