国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」

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オーストラリアは、交通ルールは世界で一番厳しい国のひとつだ。国土の面積は日本の20倍もあり、人口は日本の5分の1なのに、スピード違反に関しては必要以上に厳しいと僕は思う。

例えば、法定速度3km/hオーバーだけでもすぐに捕まり、罰金が科せられ、減点される。日本では数キロオーバーで捕まるドライバーはほとんどいないだろう。また、オーストラリアでは一旦停止の交差点でも、クルマの前輪が白線を10cm超えただけで、また罰金と減点だ。僕はオーストラリア人で、こういう厳しいルールの中で育ったからよくわかる。

だから、ニューサウスウェールズ州政府が「スマホながら運転」を防止するためのカメラを設置した時も、驚かなかった。この高画質カメラは、速度違反を取り締まるわけでも、信号無視防止のためでもない。その目的はひとつだけ。運転しながらスマホをいじるドライバーを取り締まることだ。

12月1日に、シドニーの10カ所で最初に導入されたカメラについて、同州の国土交通局のアンドリュー・コンスタンス大臣は、「この世界初の技術は、AIを使用する最先端のカメラです。違反者を取り締まるために、固定カメラを設置するだけでなく、移動カメラも用意します」と語った。

実は、今年1月から3月、政府は密かにこの「スマホ見ながら運転防止カメラ」をシドニー市内の2か所に設置し、テストを行なっていた。すると、なんと10万人以上の違反者をキャッチしたそうだ。この3カ月のテスト期間中は、違反者は罰金されないが、警告書が送られた。

もし、これだけのドライバーに罰金を課せられたら、その総額は28億円にもなる。1回の違反で2万8000円の罰金だからね。学校近辺のエリアだと、3万8000円に跳ね上がる。つまり、政府や警察にとって、この新しいカメラは、美味しい資金取得方法ともいえるだろう。

このAIを使った高画質カメラの技術は、メルボルン大学工学部の卒業生であるアレックス・ジャニンク氏によるものだ。2013年、自転車に乗っていた同氏の親友が、スマホをいじりながら運転するドライバーに跳ねられて亡くなった。

「携帯に気を取られているドライバーがいかに多いかに驚きました。親友が亡くなってから、僕はどうしたらこうした事故を防げるのか、色々考え、やはりAI技術しかないと思って、このカメラを開発しました」とジャニンク氏は言う。

つい最近まで、携帯使用などによるドライバーの注意散漫は、法的にはさほど問題とされてこなかった。しかし、「この問題は酔っ払い運転や速度オーバーより真剣な社会現象だと思います。気をつけなければ、事故や死亡者がどんどん増えてしまいます」と警鐘を鳴らす。

実は、日本でも同じ技術が設置されることが検討されている。「ながらスマホ」に対する法律も変わりつつあるので、注意が必要だ。

運転中に携帯電話を持ちながら通話をしたり画面を見る「ながらスマホ」は、これまでと比較して減点・違反点数や反則金が3倍に引き上げられる。つまり、6000円が1万8000円に跳ね上がることになる。また、「ながらスマホ」で事故を起こすなどした場合は「一発免停」となり、刑事罰の対象に。カーナビの画面を注視することも、同様に違反の対象となる。

ここで言えることはただひとつ。とにかく運転しながら、携帯を触らないことにしよう、一切!

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
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文=ピーター・ライオン

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