下記の図表1で2001年と2016年を比べてみると、この15年間で平均寿命は、男性で2.91年(=80.98年-78.07年)、女性では2.21年(=87.14年-84.93年)ほど伸びた。
ところが、この長生き傾向を素直に喜べない状況にあることも明らかになっている。平均寿命と健康寿命との差、つまり、日常生活に制限のある「健康ではない期間」が、実は、以前より長くなっているのである。
平均寿命と健康寿命との差は、2001年では男性は8.67年(=平均寿命78.07年-健康寿命69.40歳)であったが、2016年には8.84年(=平均寿命80.98年-健康寿命72.14年)に拡大している。
女性についても同様で、2001年では12.28年(=平均寿命84.93年-健康寿命72.65歳)であったものが、2016年には12.35年(=平均寿命87.14年-健康寿命74.79年)と長くなっている。
平均寿命が延びるとともに、今後もこの差が拡大し続けることになれば、長生きに備えた生活費の確保だけでなく、医療費や介護費の増加による家計へのさらなる影響も懸念される。
もちろん、国が負担する社会保障給付費も、長寿化に伴いハイピッチで増加していくことが想定されている。そんな事情もあり、今は、国は、「健康寿命を伸ばして平均寿命との差を縮める」取り組みの施策検討の真っ只なかにある。
「健康寿命」延伸のための推進策とは
では、どのような施策が検討、実施されているのか。厚生労働省が昨年6月に発表した「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部のとりまとめについて」がわかりやすい。
国民の誰もがより長く活躍できる社会の実現に向けた改革案のなかで、今後対応していくべき課題として、次の4つが掲げられている。
【現役世代の急減という新たな局面に対応した政策課題】
①多様な就労・社会参加
②健康寿命の延伸
③医療・福祉サービス改革
【引き続き取り組む政策課題】
④給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保
上記で特に注目したいのは、②の「健康寿命の延伸」についてだ。2040年までに健康寿命を2016年比で3年以上延ばして、男女ともに75歳以上にすることが目標とされている。
この目標を達成するための取り組みとして、「健康無関心層も含めた予防・健康づくりの推進」と「地域・保険者間の格差の解消」が挙げられ、自然に健康になれる環境づくりや行動変容を促す仕掛けについて言及されている。
具体的には、[Ⅰ]次世代を含めたすべての人の健やかな生活習慣形成、[Ⅱ]疾病予防・重症化予防、[Ⅲ]介護予防・フレイル対策、認知症予防、以上の3分野を中心に取り組みを推進することが打ち出されている。
厚生労働省では、この改革案に先立って、これまで「健康寿命のあり方に関する有識者研究会」や「健康日本21」といったさまざまな研究・検討を重ねてきた。こうした政府の動きは、企業の取り組みにも、ダイレクトに影響を与えている。