「ながら運転」を自動制御で防ぐ 保険会社提供の「掘り出し物サービス」 

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スマートフォン(スマホ)は、いまや日々の暮らしに欠かせない存在だ。電車に乗れば、本を読んでいる人よりスマホ画面を見ている人のほうが圧倒的に多いし、「歩きながらスマホを使うのはやめましょう」というポスターが貼られた駅の構内でも、歩きながらスマホ操作する人をいまだに見かける。

言うまでもなく、歩きながらのスマホ操作も、運転しながらのスマホの使用も危険は大きい。仮に時速60kmで走行していたなら、視線をわずか2秒そらしただけでも、その間に車は約33.3メートルも進んでしまう。歩行者が道路を横断したり、前の車が渋滞などで停止していたりしたら、間に合わず事故になる可能性は高い。

警察による取締り件数を調べてみたところ、運転中の携帯電話の使用等では、ここ5年間で、常に年間80万件以上の件数で推移してきている。2018年度でいえば84万2000万件で、実に取締り件数全体(599万件)の14%を占めている。

また、実際に交通事故につながってしまった件数も急増中で、2018年(平成30年)には2790件に達し、過去5年間で約1.4倍、10年前の2008年に比べると、2倍超に増えている。


[出典]警視庁ホームページ(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/keitai/info.html重複件数を除いているため、各項目の合計と図の総件数とは異なる。

「ながら運転」による事故は一発免停に

いま、さらなる難題も浮上してきている。「ながら運転」の罰則強化だ。スマホを見ていて事故を起こしたら即「免停」となる道路交通法が2019年12月からスタートしている。詳細は以下の通りで、以前より厳しいことは一目瞭然だ。


[出典]警察庁・都道府県警察制作のチラシ(http://www.jtsa.or.jp/new/pdf/R2doukouhoukaisei_leafletB.pdfをもとに筆者作成

免停までいかなくても、罰金もバカにならない。運転中にスマホ等を使用したり、画面を注視したりした際の反則金は、これまでの6000円から3倍の1万8000円になった(普通車の場合)。

事故に至った場合には、これまでのように反則金では済まず、すべて罰則の対象になる。

ここ数年、観光で訪日客はどんどん増え続けている。車を多く扱う事業者は、恒常的な人手不足のなかで、安全対策にも気を配らなければならない。もしも、従業員が軽い気持ちで、スマホで「ながら運転」をしてしまったらどうなるか。ようやく確保した貴重な人材が免停ともなれば、当然に人員が足りなくなり、事業に影響も出る。メディアの格好の獲物になってしまうかもしれない。

そんなことを考えていた時、ニュース報道で、軽井沢町のバス事故が取り上げられていた。あれから4年、緑ナンバーの車(バスやタクシー、宅配便などの事業用自動車)を抱える事業者には、ひとたび事故を起こしてしまうと信用が揺らぎ、経営の存続にも影響を及ぼしかねない現実が押し寄せてきている。

「ながら運転」が厳罰化されたからといって、事業者が防止のための取り組みとして行うのは、やはり社内ルールの徹底と声かけがメインとなるのだろう。しかし、実際に運転中に従業員がどうしているかは正直なところわからないし、ルール違反が発覚するのは、交通違反で取締りを受けたときか、実際に事故を起こしてしまったときだ。
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文=竹下さくら

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