両チームともプロ選手を多く輩出しており、昨年、日本代表に選出されたFW古橋亨梧(神戸)は興国高校の出身。今季もMF田路耀介、DF高安孝幸がJ2の金沢へ加入することが内定しており、これまでプロに進んだ選手は14人にもなる。GK田川知樹、MF樺山諒乃介、MF湯谷杏吏、FW杉浦力斗はJクラブから熱視線を浴びている2年生だ。
一方の昌平高校も、松本泰志(広島)や針谷岳晃(磐田)といったJリーガーを輩出。日本代表MF鎌田大地の弟・鎌田大夢(3年)が福島に加入することが決まっている。
高校選手権での優勝は通過点でしかないという育成方針をとる両チームの戦いは、2-0で昌平高校の勝利。多くの観客を集めるのも納得がいく緊張感のある試合となった。
今回、興国高校の内野智章監督が、「チーム組織」について語ってくれた。14年前の就任時には12人しかいなかったサッカー部は、いまや300人近い体制に。「プロになるなら興国高校」とも言われる内野監督が掲げる育成方法は、ビジネスにも共通するものだった。
トップダウンとボトムアップの融合
──興国高校は、サッカーの技術だけでなく、人間の育成についても大切にされています。監督が人間育成について意識していることを教えてください。
選手たちが自分たちで必要な練習を考え、自主性を育てることを重要視しています。一言でいうと「トップダウンとボトムアップの融合」です。
私が監督として、選手たちの年代や性格を踏まえてチームの方向性をトップダウンで決めますが、同時に、練習内容と出場メンバーは、私ではなく、各学年から選出された7人のキャプテンが選んでいくのです。
──監督はその決定には関与しないのですか?
まったくですね。これまでメディアなどで取り上げられている芝山(3年生)は、ずっと責任者でした。各メディアやメーカーに「今度のキャプテンは芝山」だと言ってきたのですが、最終的に副キャプテンになっていた。最後でひっくり返ったんです。
彼はプレイヤーとしては申し分ないがレギュラーではない。3年生たちから、キャプテンは終始試合に出てチームを引っ張る必要があるという意見が出て、2年生たちで話し合った結果、芝山は副キャプテンになった。
──ミーティングはどのようにしているのでしょうか。
ミーティングも選手だけで行い、自分は絶対に入りません。僕が口をはさむと、どうしても日本の文化的に選手たちのマインドや思考が支配されてしまう。例えば映像を分析する際は、僕と選手それぞれが映像を見て、せーので意見をぶつけ合う。そうすることで選手たちと監督とで、純粋な意見交換ができると思っています。
とはいえ、タイミングを見て「介入する」ミーティングも、年間に数回あります。「全部自分たちで」というのは、彼らが高校生である限り、日本の社会では通用しません。
ボトムアップは聞こえがいいのですが、「何でも自分たちでやるから、上の人たちは見守るだけで責任だけ取ってください」というのは無理じゃないですか。僕は学校の先生でもあるので、やってはいけないことを厳しく叱らなくてはいけない。なので、完全に任せる部分と、介入する部分とを明確に分けているというほうが正しいかもしれません。
大阪府代表を決める決勝戦のメンバーもみんなで決めました。任せたらもう文句は言いません。ですが、僕が思っているスタメンと大きく外れないようにアプローチはかけますよ。