「PUGC」化、芸能人のネット参入が加速───2020年SNSマーケティング予測
──最後に、2020年のSNSマーケティングの予測を聞かせてください。
森:『最強のSNS』にも書かれていますが、日本でも「UGC」(User Generated Contents)だけでなく、「PGC」(Professionally Generated Contents)や、PGCとUGCを合わせた「PUGC」が勢いを増していくと思います。プロの手によるコンテンツが影響力を増していくということです。YouTubeもTikTokにも、テレビ局や芸能事務所といった既存のコンテンツ産業のプレイヤーたちが参入し、プロのコンテンツが増えていく。すると、個人がフロントに立っていながら、チームでメディアを運用していく時代になる。
黄:中国ではすでにそうなっていますが、インフルエンサーがマーケティングにおけるひとつの太いチャネルになっていくはずですよね。
『最強のSNS』でも書いたように、プロと素人が作ったものが混じったPUGCが来ると思う。堀江貴文さんのように、もともと有名だった人は、ただ話しているだけの動画で100万再生を超える一方、もともと無名だった人は、精緻に作り込んだ動画を発信する必要がある。
ただ最近、中国のをショートムービー業界を見ていて思うのが、「プロが作った感」が強すぎると伸びないということ。YouTubeや映画、テレビなどは、「ちょっと頑張って、難しいものを吸収しよう」「ワクワクドキドキしよう」と前のめりに観ますが、スマホの縦型動画やTwitterは、もう少しリラックスした受け身な気持ちで観ているので、ガチガチのPGCだと疲れてしまうんです。
森:ここで言う「P(プロフェッショナル)」は、動画編集のクオリティだけではなく、戦略面まで含めた言葉です。だから、あえてUGC的な見せ方をするためにクオリティを落とすこともありえる。個人の感覚で伸ばせる範囲には限界があるので、プロが戦略性を担保する必要があると思います。
黄:中国のプロダクションが作り、すごくバズっているチャンネルがあるのですが、そのチャンネルも、あえてクオリティを落としています。ダサい服を着て、すごくいいカメラで撮ったものを縦に切ったり、あえてスマホで撮影したり。
インフルエンサーという産業が成熟してきていることの、現れだと思います。どんな産業も、「素人が屋台を出している」時代を経て、マクドナルドのようなプロの手によるものへと成熟していく。
森:すると今度は、揺り戻しで“お母さんの味”のようなものが流行ったりする。まさに、PUGCですよね。
黄:そうそう!「YouTubeは子供や若い人たちのものだ」と思っている人たちも多いと思うのですが、どんどん成熟してきています。
あとは、芸能人がネットに来る流れが、ものすごく加速すると思います。「テレビからスマホへ」の動きが、なだれ込む時代。今までは、まだまだポツポツとした水滴みたいものだったのが、ジャーッと蛇口が開く。
森:著名人によるYouTubeアカウントの開設ラッシュは、本当にすごい。毎週何十人も開設していますから。既存のオールドな産業のコンテンツがネットに流れ込むことで、PUGCの風潮もますます高まっていくでしょうね。
黄:そうなると、ライブコマースも一気に加速しますよね。
森:動画の年齢層が一気にリフトアップされ、ECにも連携されていくと思います。