森:そもそも日本には、SNSや動画共有サイトのアカウントを、自社のオウンドメディアとして活用する企業が少ないですよね。「広告枠を買う」発想が強すぎて、「アカウントを育てていく」という考えがまだまだマイナーです。
企業にSNSアカウントの発行と運用を提案することも多いのですが、日本では「短期的なバズを狙う、“打ち上げ花火型”のキャンペーンこそがマーケティングだ」という考え方が主流で、なかなか納得してもらえないんです。
黄:打ち上げ花火型だと、すでに人気のSNSに出稿することになるので、高値づかみになりますよね。広告費を長期的な投資と捉え、アカウントを育てていくべきなのに、短期的な費用対効果しか見ていない企業が多い。
だからこそ、企業に中長期的なSNS運用を提案するときは、長期的な広告費に先行投資する発想になるため、中期経営計画を立てるタイミングで盛り込ませないといけない。マーケティングや広報の担当者レベルではなく、経営レイヤーに提案しないと無理だと思います。特に、化粧品やカミソリなど、広告費が大きいジャンルの商品を取り扱う企業であれば、経営へのインパクトが大きいはずです。
森:僕もそう思います。マーケティングプロモーションの提案レベルではなく、中長期的な経営課題に入り込まないと。
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──「張る」対象のSNSは、どのように選定すればいいのでしょうか?
森:基本的には、全部のSNSに張ったほうがいいと思います。どのプラットフォームが勝つかなんて、究極的には誰にも分からない。今であれば、TiktokとYouTubeの両方にコンテンツを流すのが一番いいと思います。
VAZ所属の人気モデル・ねおも、一時期はTwitter、Instagram、TikTok、YouTube、LINE BLOG、LINE LIVEに全張りしていました。中国と異なり、日本は強いプラットフォームの数が少ないので、複数のSNSに張るのがおすすめです。
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黄:中国だと、ひとつのジャンルで100個近くのサービスが立ち上がり、うち生き残るのは10個ほどですが、日本は立ち上がるサービスすら数えるほどしかありませんからね。伸びるプラットフォームの予測がしやすい。
「張る」べきプラットフォームを考えるときは、「そのプラットフォームの強みは、代替されやすいか?」という観点を考慮するといいでしょう。たとえば、「アイデア」は代替可能なので、強みとしては少し弱い。Snapchatは「24時間以内に消える」というアイデアで一斉を風靡しましたが、Instagramにすぐにストーリー機能を実装されてしまいました。
一方でTikTokは、技術とグローバル性、そして資金力が強み。これは代替が難しいので、サービスの永続性が高く、「張る」価値が高いわけです。YouTubeも、Googleからの資金と技術力が強みですし、Facebook傘下のInstagramも同様です。