ビジネス

2019.12.31

バズ頼みの「打ち上げ花火型」マーケティングは終わる。2020年のSNSトレンド大予測【黄未来 x VAZ森泰輝】

(左)『TikTok 最強のSNSは中国から生まれる』を上梓した黄未来氏(右)VAZ代表取締役社長・森泰輝氏


“成金”が尊敬を集めない日本、芸能人とネットタレントの垣根がない米中

──コンテンツ産業において、海外の最新状況を参考にすることは有効なのでしょうか?

:『最強のSNS』も、オンラインサロン・中国トレンド情報局も、一番のコンセプトは「中国の今を知れば、日本の未来がわかる」。TikTokを紹介したのは、そのための手段でしかない。中国で思ったのですが、私たちの考えるアイデアは、14億人もいると誰かがやってしまっているんです。TikTokのチャンネルも、スタートアップのサービスも、ジャンルとしてはほぼ出尽くしている。

だから、中国の事例を見ることは、日本での事業にも活きるはずです。もちろん、中国と日本は文化や社会の性質がまったく異なりますが、その点さえ踏まえれば、結構いい線で予想できるし、タイムマシン経営が可能です。

:コンテンツ産業でも、タイムマシン経営は可能ですよね。僕も、YouTuber市場が成熟しているアメリカのコンテンツをよく漁っています。

:アメリカのYouTubeは、なんでもありますよね。ガジェット系のインフルエンサーがかなり稼いでいたり。

:だいたい出尽くしていますよね。アジアでは中国が一番強いですし、米中は日本と比べて、ネットタレントと芸能人の垣根がない印象があります。

:文化の違いが大きいと思います。「アメリカン・ドリーム」「チャイニーズ・ドリーム」といった言葉に象徴されるように、米中の人は「一代で成り上がった人がかっこいい」「自分でお金を稼いだ人がリスペクトされるべき」と考える印象があります。

一方で、日本人は、もう少しヨーロッパ寄りの貴族的な考え方を持っています。伝統を大事にし、“成金”をあまり尊敬しない。ヒカキンが100倍稼いでいようが、アミューズやホリプロで伝統的なステップを踏んでビッグになるほうが、「すごい人」だと思われがちです。

:日本は動画でブランドバッグなどを出すと叩かれますが、中国は「ブランドバッグやランボルギーニを買いました」と言うと、むしろ「かっこいい」と思われる。日本は「ひけらかしちゃいけない」という考え方が強く、炎上につながりやすい。

:日本はある意味“優しい世界”で、「貧乏な人にも人権がある」という考え方が主流なんですよ。だから、クソリプもバンバン飛ばせる。貧乏な人が「自分のせい」だと考えない。

一方で、中国では、貧乏なことが一番恥ずかしいんですよ。貧乏なのは自分のせいで、成功した人は、賢くて努力しているから「すごい」という価値観。

:昔の日本は、そうじゃなかった。トヨタであれホンダであれ、今のトラディショナルな大企業は、一代で成り上がったはず。それなのに、かつての成り上がりが“貴族”になり、成り上がりが褒められない文化ができてしまった。

:貧乏な人にも人権があること自体は素晴らしいと思いますが、成金を尊敬できない社会はおかしいですよね。そもそも、「成金」というネガティブな言葉がある時点でおかしい。ベンチャー社長よりも、慶應幼稚舎から上がってきた慶應卒商社マンのほうが評価されがちな日本。

最近、HIKAKINさんが女優の篠原涼子さんのドラマに出たときに、「篠原さんと一緒に出演できて、僕ほんっとうに光栄です!!」と言っていたのを見て驚きました。冷静に考えて、絶対にHIKAKINさんのほうが稼いでいるじゃないですか。それにもかかわらず、社会的なステータスとしては、テレビによく出ている芸能人よりも低いと感じてしまう。

ただ、その歪みさえも利用してしまえばいいとは思っていて。社会の歪みには、ビジネスチャンスがつまっていますから。すごく好きなジャック・マーの言葉があるんです。「愚痴を言っている人を見たら、喜んでその問題をもらいに行くのが起業家だ。大金持ちになりたいなら、大きな問題を解決しなければ」と。
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文=小池真幸 写真=小田駿一

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