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2019.12.31

バズ頼みの「打ち上げ花火型」マーケティングは終わる。2020年のSNSトレンド大予測【黄未来 x VAZ森泰輝】

(左)『TikTok 最強のSNSは中国から生まれる』を上梓した黄未来氏(右)VAZ代表取締役社長・森泰輝氏


:僕も、「芸能大手のテレビに出ている人が偉い」という貴族的な風潮に対して、文句を言うのではなく、そうじゃないと証明するために戦っている。テレビでも活躍してはじめて、「ネット発のインフルエンサーもすごい」と認めてもらえる。VAZのビジョンに「ねおのようなネット発アイドルを、テレビ好きのおっちゃんでも認めるスターにする」と掲げているのですが、こうして一発逆転を狙えるのも、歪みがあるからこそです。

:歪みがあると、下剋上のための隙間ができますからね。篠原涼子さんをネット側に引きずり込み、「YouTubeのほうが楽しいからドラマには出ない」とまで言わせたいですよね。



:少し観点をずらすと、「ブランドって何だろう?」という話にも帰着する。認知の向上に大きく貢献するわけでもないのに、多くのタレントがVOGUEに出たがるのは、数値以外のブランド価値があるから。ネット進出を躊躇する芸能人は、「ブランド価値を下げたくない」と考えているのかもしれません。

:その点も日中で差があって面白い。日本だと、そこまで儲かっていなくても、「女優」というステータスを守るために続ける。一方で、中国では、「女優」というステータスを踏み台に、インフルエンサーになったほうが全然儲かるので、みんなネット進出を選ぶんです。

:VAZのタレントは、テレビに出るとしてもブランディング目的で、稼ぐのはYouTubeやTikTokです。ブランディングとマネタイズは分けたほうがいい。日本のインフルエンサープロダクションはどちらか一方しかやらないところが多いのですが、うちは両方ハイブリッドに手がけています。

:森さんは、伝統的なブランド産業に、自社タレントたちを送り込んでいるんですね。


:そうですね、ねおを載せてもらうために、Popteenに営業しまくっていたこともあります(笑)。実際、ねおが載ってからPopteenの部数が伸びて、そこからPopteenがどんどんネットの子たちを専属にする流れも起きています。

:みんなが高いと思っている壁も、1個穴を開けたら、社会的認知がひっくり返り、ガラリと変わるパターンもある。その「皆が気づいていないけれども、実は変えられそうなピース」の見極めがとても大事だし、インフルエンサーやライブコマースは、風穴を開ければオセロのように全てが変わっていくタイプのものだと思います。

:ライブコマースが日本で流行らないのは、インフルエンサーの視聴者層に若い人が多いからですよね。若い人は購買力がないから、動画を視聴することはあっても、ECで商品を購入してもらうところまではつなげにくい。

:本当にライブコマースでお金を落とさせたいなら、『ジャパネットたかた』のようなテレビ通販と同じ戦い方をしなければいけない。“おばちゃんインフルエンサー”が必要なんですよ。

:ライブコマースをビジネスとして成立させたいなら、若者向けのプラットフォームではなく、徹底的にテレビショッピングを真似たほうがいいですよね。
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文=小池真幸 写真=小田駿一

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